日本が国際的に競争力を発揮している電子関連などの機能性材料。その原料である機能性化学品の製造プロセスが大きく変わろうとしている。多品種少量生産の機能性化学品では従来、反応釜に1回ごとに原料を入れ反応物を得るバッチ法が主流だった。これに対し現在、固体触媒を詰めた反応モジュールに連続的に原料を供給し、反応物を得るフロー合成法への転換が進められようとしている。
 バッチ法では反応工程ごとに分離・精製作業や反応釜の洗浄作業を要するため、CO2だけでなく溶媒などの廃棄物を大量に排出する。分離・精製作業では蒸留プロセスが用いられるが、加熱・冷却のために多くのエネルギーを消費する。洗浄作業では人手がかかることや、複数の工程を経るために最終生成物の収率が数%低度にとどまってしまうなど、生産性の低さが課題となっている。
 機能性化学品でフロー合成法が実用化できれば、省エネ、収率向上だけでなく、装置の小型化やプロセスのシンプル化などでCO2排出量・廃棄物の削減につながると期待される。「必要な時に必要な場所で必要な量だけ生産する」という多品種製品に適した究極の製造プロセスを確立できる可能性がある。
 そのため2000年代から欧米を中心にフロー合成法の研究開発が進められてきた。米国では11年から国防総省高等研究計画局(DARPA)が「バトルフィールド・メディシン」と呼ばれるプロジェクトを開始。戦場で医薬品を製造するため、冷蔵庫大のコンパクトな医薬原薬製造プロセスを開発している。一方、医薬原薬など機能性化学品の生産大国になった中国、インドも低コスト化に向けて研究開発を活発化させている。
 機能性化学品の世界市場は15年に16・2兆円で、30年に35・9兆円まで成長すると予測されている。機能性化学品は電子材料や機能性ポリマーなど日本の化学メーカーが高いシェアを維持している機能性材料の性能を決める重要な原料であり、日本の化学産業の国際競争力の源泉となっている。フロー合成法が実用化されれば機能性化学品の産業構造が大きく変わる可能性があり、日本の化学産業が国際競争力を維持していくためにも、産官学連携で開発を加速させる必要があるだろう。
 また、中国の環境規制の強化が「原料の原料」ともいえる機能性化学品の原料の供給不足や価格上昇を招き、日本の化学メーカーの業績を直撃している。フロー合成法で、これら原料を低コストで国内生産できれば、日本の化学産業のサプライチェーン強化にもつながるだろう。

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