世界経済の不透明感が強まるなか設備投資が失速している。産業機械の2019年度上半期(4~9月)の受注はマイナスで、下半期も回復の糸口が見出せない。機械メーカーは厳しい冬を迎えることになる。その一方、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など先端技術の開発が活発だ。今後はハードとソフトの両面で事業基盤の強化を急いでほしい。
 日本産業機械工業会がまとめた今上半期の受注は前年同期比10・4%減の2兆1613億円と2ケタのダウン。上半期ベースのマイナスは3年ぶりだ。うち内需は同5・4%減の1兆5573億円、外需は同21・2%減の6040億円で、アジア、北米、アフリカ、ロシア・東欧など世界的に失速した。
 産業機械市場では、米中貿易摩擦の影響、新興国経済の失速など世界経済の先行きが懸念されることから、設備投資の抑制や様子見の状況が続く。下半期に入っても回復のめどが立たない。19年度通期で5兆円の大台を維持することは難しそう。
 その一方、機械メーカー各社は、従来ビジネスである装置の製造販売に止まらず、デジタル技術を活用した新ビジネスモデルを模索している。ハードとソフトの両面で支援し、新しい付加価値を創造する考えだ。
 日立造船は、石油化学プラントの熱交換器向けアフターサービス事業を強化している。熱交換器の管端溶接部検査で超音波探傷技術を実用化しているが、今秋にはAI搭載ソフトウエアと、超小型ウエアラブルカメラ搭載のスマートグラスを使った新サービスを開発した。高度な数値解析技術で遠隔地にいながら検査員を支援できる。
 ファナックは、製造現場向け新しいIoTシステム「フィールドシステム」を来年、米国および欧州市場に投入する。自動車、家電、電子機器工場では通常、複数メーカーの製造装置が混在している。同システムは全製造装置を一括管理でき、トラブル防止に役立つ。国内で実績があり、海外ユーザーにも提供する。
 化学プラント用撹拌機の大手メーカーである佐竹化学機械工業は、完全無漏洩型の撹拌機を開発した。AIを活用した、トラブル防止に役立つ新システムも今後投入する。
 産業機械市場は、いま暗いトンネルに入りつつある。その一方、先端技術の開発が急ピッチで進む。受注の急回復が望み難いにしても、顧客サイドでは省エネ対応、人手不足対応、環境保全、メンテナンス対応といったニーズが強い。ハードとソフトの優れたサービスで事業基盤を固めてほしい。

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