セラミックス複合材料(CMC)の開発が着実に進展している。CMCとは、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスを複合化した材料。合金よりはるかに低比重である一方、プラスチックでは不可能な耐熱性を実現できる。セラミックスの課題である脆性破壊などを解決したことで適用範囲が一挙に広がると期待されている。世界ではGEなどが航空機エンジン部材として適用を始めている。
 CMCのなかでも非酸化物系のSiC(炭化ケイ素)繊維/SiCは耐熱温度が1100度C以上もあり、過酷な航空機エンジン内で長期使用に耐える物性を持つ。ニッケル超合金を上回る耐熱性を3分の1の比重で実現でき、航空機軽量化に大きな役割を果たし得る。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界の航空機メーカーおよび航空会社は壊滅的なダメージを受けている。世界の航空機産業の市場規模は2019年に10兆円を超えたが、今年は7割程度減少しそう。IATA(国際航空運送協会)は19年レベルに旅客需要が回復するのは24年ごろと推測。リモート会議などの普及次第では、航空業界の利益の源泉であるビジネスクラス乗客が以前の水準に戻るのか、さらに不透明となる。
 しかしCMCの開発は歩みを止めることなく進んでいる。IATAでは、50年にCO2排出量を05年度比50%削減する目標を掲げる。実現に向けてバイオ燃料、水素燃料などを含めた抜本的改良も検討されているが、CMCなど先進材料の適用範囲を広げることも欠かせない。
 新型コロナウイルスに社会が覆われるなか、国内初の産官学連携によるCMC先端研究拠点である東京工科大学CMCセンターは幸い「開発に、ほとんど影響は出ていない」(香川豊センター長)。シミュレーションソフトによって研究時間・費用を節約するなどの成果を上げている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとも連携し、日本で作った試験片を世界のホワイト国に配布することで、海外情報の入手とともに検査技術の標準化に取り組んでいる。
 新たな材料を適用するには素材の製造、加工、検査などあらゆる工程で新たな技術・機器が必要になる。このほど幕張メッセで開催された「第3回CMCシンポジウム」では、難加工であるCMCをレーザー加工する技術が紹介されるなど、裾野を広げるための候補技術・企業が見出されている。航空機は今後も重要な移動手段であり、その燃費改善は重要課題。産官学が技術力を結集し、世界の航空業界発展を支えてほしい。

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