足元では部品の調達難や半導体不足が課題となっている自動車業界。中長期ではカーボンニュートラル(CN)の実現が大きな課題であり、欧米を中心に世界的にEV(電気自動車)シフトが加速している。

 モータースポーツにも脱炭素の波は押し寄せている。国際自動車連盟(FIA)が2020年末に発表したCO2排出削減のロードマップでは25年に19年比20%、30年に50%の削減目標を掲げる。同時にカーボンオフセットで21年からCN達成、その後も排出量とオフセット購入量を削減しつつ、空気中からのCO2分離回収(DAC)技術なども導入し30年にノンオフセットでCNを実現する考え。

 FIAが運営している5つのレースで最も有名なのはフォーミュラ1世界選手権(F1)。化石燃料を用いたエンジンの爆音を轟かせ、ものすごいスピードで疾走するF1マシンは大量のCO2を排出していると思われがちだが、18年のシーズン中の排出量約25万6500トンのうち、F1マシンからの排出量はわずか0・7%。全体の45%を輸送関連、27%を人の移動が占めるという。それでも100%持続可能なドロップイン燃料導入などを進め、さらなる排出削減を目指している。

 FIAはEVによるフォーミュラE世界選手権(FE)も運営。「EVのF1」とも言われ、21年から日産自動車が参戦中だ。走行音が静かなためレース中に音楽を流すなど従来のモータースポーツと違った雰囲気で、まだ知名度は低いが、ワイヤレス充電の導入や電池の高容量化などを進めている。

 日本では、日本レースプロモーションが昨年10月、サステナブルなモータースポーツ業界を目指すプロジェクトを発表。ホンダやトヨタ自動車がパートナーとして参加し、CNに向けた実験的な技術開発を行うと発表。今年からe-Fuelやバイオ燃料、植物由来のバイオコンポジット導入に向けたテストなどを開始する予定だ。

 トヨタ自動車は昨年5月、24時間耐久レースに水素エンジン車で参戦し、世界を驚かせた。12月には消極的と言われてきたEVで新たな戦略を発表。16台もの次期EV車両を披露するとともに電動車の意欲的な投資・販売計画を示した。

 モータースポーツは「走る実験室」とも言われ、自動車技術発展に大きく貢献してきた。化学はじめ素材業界も、この自動車産業のCN実現に向けた競争に「参戦」し、100年に一度の変革期にある自動車業界を変えるような素材や技術を提案し、新たな果実を獲得して欲しい。

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