「繊維大国」である中国においてエコ素材に関する関心が高まっているようだ。日本化学繊維協会の富吉賢一副会長によると、これまで中国は業界の国際団体に出席しても「エコに関する発言は、ほとんどしてこなかった」そうだ。それが9月に安徽省蚌埠市で行われた「第25回中国国際化繊産業会議」では一転して熱心に語り出したというのだ。
 国際会議の開催場所に選ばれた蚌埠市は同市を中国におけるバイオ繊維の拠点として発展させる方針で、3~5年以内にバイオベースの新たな産業クラスターを設置する計画を持つ。また中国を代表するバイオケミカル企業の安徽豊原集団は蚌埠市に本社を構えており今後、中国最大のポリ乳酸工業団地を建設する計画という。その地で国際会議を開いたという点に、バイオベースの繊維産業に本腰を入れんとする中国の姿勢が読み取れる。
 化学繊維の世界の市場規模は6000万~7000万トンとされ、このうち中国が7割強を占める。一方、日本の化繊生産量は2018年実績で88万トン。「コストを考えても国産の汎用品では勝負にならない」(化繊協)のが現状で、日本は得意とするエコや快適性などの高機能繊維の展開に磨きをかける以外に生き残る道はない。
 そして実際にも、日本の繊維メーカーはエコ素材で他の国をリードする存在だ。例えば使用済みポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルや廃材を使用した再生ポリエステル繊維では、これまで難しいとされてきた風合いや色の再現に複数の企業が成功している。これら素材は、とくに環境意識の高い欧米系アパレルから強い引き合いがあるという。
 ただ富吉副会長は「今後、環境を意識しない製品は売れないのではないか」と語る。そのうち中国が技術的にキャッチアップし、いつかはエコ素材が“標準装備”される時代がやってくるだろう。繊維業界では、ようやく「エコがカネになる時代がやってきた」(繊維メーカー幹部)段階だが「ポスト・エコ」を見据えた取り組みは必須だ。繊維メーカーが研究開発に力を注ぐスマートテキスタイルは、その代表例だろう。
 「入口(素材)は良いが出口(商品)に問題がある」-。リチウムイオン電池の産業構造について、ノーベル化学賞に決定した旭化成名誉フェローの吉野彰氏は、こう指摘した。スマートテキスタイルも同じ轍を踏みかねない。市場が黎明期にある今こそ、発信力ある完成品メーカーやIT関連企業との積極的な取り組みを期待したい。

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