日本化学工業協会は、低炭素社会実行計画で、2030年度における新たなCO2排出量削減目標を掲げた。13年度を基準年として排出総量を679万トン(10・7%削減)、BAU(追加的施策を講じないままで想定される排出量)比で650万トン減らす。絶対量での目標設定は初めてで、化学業界の温暖化対策の大きな転換点となる。
 日化協はこれまで、05年度を基準年にBAU比で20年度に150万トン、30年度に200万トン削減する目標を掲げてきた。17年度の実績は同573万トン。大型設備の統廃合の影響もあるとはいえ、15年度から連続して30年度目標を達成したことから目標の見直しを検討してきた。
 BAU比は省エネ技術の導入など削減努力の結果を示すものといえるが、効率化が進んでも生産量が拡大することでCO2排出量が増えてしまう場合がある。一方、絶対量での目標設定は、生産量の拡大にともなう排出量の増加を認めない。今後、国内での大規模な増産が考えにくいとはいえ、乾いた雑巾を絞り続けてきたことを考えると思い切った目標設定と言える。
 この背景には「パリ協定」がある。「2度C目標」の達成には今世紀後半に排出量をゼロにする必要があるといわれる。日本の中期目標は50年度に80%削減だが、50年に排出ゼロという意見も出始めており、社会の流れは低炭素化から脱炭素化へと移行しつつある。
 排出削減には技術革新が不可欠だ。膜による蒸留プロセス、CO2の原料化、非可食バイオマス原料の活用、微生物による創電型排水処理などが挙げられた。これら技術が広がれば30年度以降、削減量が加速的に増えると期待できる。時間はかかるが、水とCO2から化学品を作り出す「人工光合成」が実現すれば排出ゼロも夢ではない。
 もう一つ期待したいのが、CO2削減につながる製品デザインやシナリオの提案。化学産業には、自動車の軽量化や建築物の高断熱化など産業全体のイノベーションにつながる素材がある。ユーザー産業とともにバリューチェーン全体でCO2排出を極小化する取り組みを、もっと強化して欲しい。
 そのためのツールが12年度から取り組む「cLCA」(カーボンライフサイクル分析)。製品が、そのライフサイクルを通じて削減可能なCO2の量を算定するための手法で、どの製品を使えば、より排出量を減らせるのか、生産プロセスや原材料を転換した場合、どう排出量が変化するのかを分析することも可能。指針などの公開から時間が経ったことから、cLCAの見直しも進めているという。

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