東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、関税削減にインドが慎重な態度をとったことで目標だった年内妥結が見送られた。米中の貿易摩擦についても、交渉前進の期待が高まるものの、いぜん予断を許さない。米トランプ政権の自国第一主義を筆頭に保護主義が世界で台頭している。自由主義経済の恩恵を最大に受けてきた日本が、その枠組み維持のため主導的な役割を果たす時だ。
 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加するRCEPは、インドが中国製品の流入拡大を恐れて撤退する考えを表明した。関税引き下げ・撤廃で国内産業が打撃を受ければ、政権が揺るぎかねないとのモディ政権の判断だ。
 RCEPはEU(欧州連合)を上回る世界人口の5割、国内総生産(GDP)の3割を占める世界最大規模の自由貿易圏。2013年から交渉が続いてきた。日本にとって貿易相手国1位の中国との初めての自由貿易協定(FTA)が含まれ、また、その中国を牽制する意味でもインドを巻き込んだ交渉を進めてきた。
 米国の保護主義に対抗し、中国の対外開放を加速させるうえでも大きな意味がある。インドを除く15カ国で20分野にわたる交渉を終え、来年の署名を目指して詰めの協議に入った。この後はインドを引きとどめ、16カ国での貿易圏の形成に努めなければならない。
 RCEPの交渉と時を同じくして今月5日から上海で「中国国際輸入博覧会」が開かれた。開幕日に基調講演した習近平国家主席は、米国との貿易摩擦を前提に「保護主義に断固として反対する」と主張。主要7カ国(G7)首脳として初めて開幕式に出席したマクロン仏大統領も「保護主義に勝者はいない」と述べた。同博覧会は中国が対外開放を強調し、輸入拡大をアピールするのが狙いだが、習政権が世界経済の協調を声高に叫ぶことは評価できるだろう。
 米中貿易摩擦に関しては、米政権が発動ずみの対中関税について電気製品や衣服など一部の撤回を検討しているとも報じられた。部分合意に向けた動きとなり、関税合戦の休戦にもつながる。いぜん先行き不透明だが両国は世界経済への影響を重く捉え、早期に妥協点を見いだして欲しい。安倍政権には、米国はもちろん中国との政治的関係改善も進むなかで両者の歩み寄りに知恵を絞ってもらいたい。
 日本は世界経済のなかで、グローバル・サプライ・チェーンの中核的役割を担って発展してきた。世界の経済体制が大きなパラダイムシフトの時を迎えるなか、今こそ自由貿易の推進役を買って出るべきだ。

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