中国で輸出管理法が施行された。具体的な運用が示されておらず、産業界も不安を募らせている。規制を恐れて外資が中国への投資を手控えるようなことになれば、外部の技術導入をテコにした経済発展を狙う中国自身の首も絞めることになる。早急に規制リストや運用方針を明らかにしてもらいたい。
 輸出管理法は、安全保障にかかわる製品や技術などの海外への移転を禁じる法律で、米国が中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などに行っている輸出規制に対抗する狙いがある。
 規制対象を「軍事用品や軍事転用が可能な製品、国家の安全と利益の維持・拡散防止など国際義務の履行に関する貨物・技術・サービスなどの品目」と定め、対象品目を輸出する場合、事前に輸出先や用途を申請し政府の許可を得る必要が生じる。リストに入った輸入業者やユーザーに対して当局は管理品目の取引を禁止・制限できる。
 従来から輸出管理制度があるが、中国政府は、これを不完全なものであることを認め、2015年ごろから新たな法案を検討してきた。商務部が17年6月に公表した草案は、米国並みの再輸出規制や不明確な「みなし輸出」、報復措置など、多くの懸念される点あったため、日米欧が改善要望の意見書を提出するなどして物議を醸した。その後、19年12月、20年7月とパブリックコメントが実施され、今年10月の全国人民代表大会常務委員会において成立したのが今回の法律だ。
 もっとも外国による輸出規制が中国の安全・利益に害を及ぼす場合は対抗措置を取るとして48条に「報復条項」が復活。中国で生産した原料を輸入して日本で加工するなどした後に第三国に輸出する「再輸出」の文言も盛り込まれるなど、運用上の懸念は残ったままとなった。
 懸念される事項として、例えば中国国内において中国国籍の者や企業から外国人、外国企業への、みなし輸出が規制対象となる可能性が指摘される。運用次第では、中国内で日本人駐在員と現地スタッフが技術的な会話をすること自体も問題視されかねず、外資が中国に研究開発(R&D)機能を持つのを躊躇する原因にもなり得る。
 中国は、これまでも知的財産権の保護などのビジネス環境の整備の遅れ、サイバーセキュリティ法などの不透明な制度設計が、企業のグローバルな経営活動を妨げ、外資が中国進出をためらうと指摘されてきた。輸出管理法についても、リストの内容、運用の不透明性が、結果的に経済発展にマイナスの影響を及ぼすことを認識すべきだ。

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