「食品ロス削減推進法」が先月成立した。政府が食品ロス削減の基本方針を策定することを定め、市町村に具体的な推進計画を作り、実施することを義務付けた。また事業者が国、自治体の施策に協力することや、消費者にもロス削減のための取り組みを求める「国民運動」という位置付けだ。成立から6カ月以内に施行される。食品ロスを減らすには原料サプライヤー、生産メーカー、流通業者、納入先が密接に連携を取り、無駄のない供給計画を作成し、共有することがカギを握る。日本の食品の種類の多さは世界でも指折り。幅広い選択肢を消費者に提供し、長寿社会を築いたのは事実だが、健康寿命延伸へ舵を切った今、飽食から「美味しく、栄養バランスよく、量的には、やや抑え気味の食生活」へ転換することで、食品ロス削減が果たせるのではないか。
 2016年度の食品ロス推計量は、約643万トン。内訳は事業系が352万トン、家庭系が291万トン。食品ロス問題は、腐るなどして食べることができくなった廃棄と異なり、食べられると考えられる期間に食品を捨ててしまう行為にあたる。コンビニでは、食品の商慣習「3分の1ルール」から納品期限を伸ばして、「2分の1ルール」へと見直す動きもあるが、ロス削減を進めるには消費者へのわずかなポイント還元だけでなく、もうひと工夫が求められる。
 一方、経済の観点からすれば食品ロス最小化のために小売店や飲食店が仕入れを絞り込み過ぎると、店頭やメニューの数が少なくなり、客の足が遠のくリスクもある。これを、いかにして回避するのかが課題になると予想される。コンビニなど店舗では、どこでも同じものが手に入るが、これを特色ある食品中心に取り扱う店舗へ改めれば、付加価値化とロス削減を両立する対応策になるのではないか。またハイレベルな日本の加工技術を駆使し、開発した長持ち食品の流通を増やすことも取り組む価値がある。新鮮さや風味、美味しさが経時的に失われることの少ない容器、包装用機能性フィルムの使用を増やすこともロス削減に役立つ。 
 加工食品業者も意識転換が必要だ。保存料などの添加物を、国が安全だと認める基準に従って使い、食品をロングライフ化させれば「食の安全・安心」が保たれる。それが健康維持につながるのだという考えを啓蒙することも食品ロス削減につながる。新法の成立が、食品業界が「無添加」の表示を、そして飲食業や流通業界が「添加物不使用」のメニューを特別なものの如くPRする風潮を改める機会になることも望みたい。 

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