37・3%、28・3%、27・6%、25・5%-。これらの数字は高収益を誇る化学メーカーの2021年4~9月期の営業利益率である。37・3%はJCU。メック、デクセリアルズ、扶桑化学工業と続く。いずれも通期売上高が1000億円に満たない中堅企業だが、グローバルニッチトップ戦略で高収益のビジネスモデルを構築している。

 JCUは、半導体のプリント基板、パッケージ基板向け銅メッキ薬品で世界トップシェア。メックは、パッケージ基板の銅表面を粗化するエッチング薬品のトップメーカーだ。扶桑化学工業は半導体研磨用の超高純度コロイダルシリカを手がけ、超高純度市場で9割以上のシェアを握る。同社はグローバル市場で高シェアを握るリンゴ酸メーカーという一面も持つ。

 3社は半導体分野で欠かせない材料を手がけ、それぞれ圧倒的なシェアを握るのが強み。足元の半導体需要の拡大を受け、引き続き高い営業利益率を維持する。

 他方、デクセリアルズは異色だ。強みを持つのはディスプレイ分野。車載やノートPC向けの反射防止フィルム、ディスプレイやセンサーなどのファインピッチ接合に寄与する異方性導電膜(ACF)が収益の柱だ。

 ほかにハイエンドスマートフォンのカメラモジュール向けでデファクトスタンダードを獲得する精密接合用樹脂も堅調。ノートPC向けで約50%のシェアを握る表面実装型ヒューズは、eバイクやコードレス家電などリチウムイオン電池搭載のアプリケーションが広がり、収益を伸ばしている。同社は4製品を差異化技術製品に位置づける。

 ここ2年でデクセリアルズの収益性は一気に高まった。2年前の中間決算時の営業利益率は9・4%、昨年の中間で同15・1%。そして今年は同27・6%をたたき出した。2年前の19年、同社はトップ交代の人事を行っている。

 「コロナ下のリモート需要のおかげ」と謙遜する新家由久社長。確かにコロナという追い風はあったが、社員に強く求めてきた「自己変革」が浸透した成果も大きい。「世の中が大きく変わる。われわれも変化しないと生き残れない」-。一部上場企業のトップが発する危機感が社員に伝わり、社員のマインドが大きく変わった。

 同社の前身はソニーケミカル。12年にソニーグループから離れ、現社名となった。由来はデクステラス(巧みな)+マテリアルズ(材料)。持ち前の反骨心と高い技術力が根幹を支える。今年は、本社を東京オフィスからマザー工場の栃木事業所へ移転した。変革は、まだまだ続く。

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