年が明けて2020年、いよいよ5G(第5世代通信)時代の幕が開く。「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との同時接続」といった特徴は社会に大きなインパクトをもたらすであろう。しかし「ただ単に通信速度が速くなるだけ」と捉えている経営者が案外多い。
 モバイルネットワーク通信は1980年代に誕生した1G以降、10年単位で進化を遂げてきた。とくに3Gから4Gに移行し、通信速度が飛躍的に向上した2010年代、スマートフォンが普及して、これまでの人々の生活様式を一変させた。仕事も勉強も遊びも、何をするにもスマホ一つで事足りる時代となった。
 スマホに依存しない世代にとって、確かに5Gは通信スピードが速くなるだけのことに過ぎない。2時間の動画が3秒でダウンロードできたとしても、そのメリットはさほど感じないだろう。しかし5Gは、これからの企業・社会のあり方を確実に変える。実用化に期待が高まっている完全自動運転にしろ遠隔地のロボット手術にしろ、5Gがなければ実現不可能な技術といえるからだ。
 この5G社会の実現に向け、化学メーカーは素材レベルからの革新を通し、新たな社会を支えようとしている。例えば液晶ポリマー(LCP)は、5G向けの高周波用基板材料のほか、自動車用ミリ波レーダー用として自動車メーカーからも要望の強い素材で、誘電正接の改善に各社しのぎを削る。革新素材なくして5Gは成り立たないといえるほど、その重要性は日増しに高まっている。
 素材開発は着実に進み、事業拡大に結び付きつつあるが、問題は5G社会に向けた今後の組織のあり方だろう。フィールドは異なるが、先を見据えた組織作りとして手本となるのが、帝人ファーマが行った医薬事業・在宅医療事業の組織再編。従来の医薬と在宅医療の2事業本部を営業本部として統合し未病から疾病、介護までのケアサイクル全体を通じたソリューション提供を実現する組織体とした。この取り組みは、高齢化時代の柱と目される地域包括ケアシステムの進展を見据えた変革だ。まさに未来に向けた“マインドチェンジ”といえる。
 5Gが普及した社会を明確にイメージできないと、メーカーとしての生き残りさえ危うくなる。ワープロが普及した当時、あくまで手書きにこだわった社員がいなかっただろうか。その社員がどうなったか、覚えている経営者も多いはずだ。速さの先にある5G社会を見据えてマインドチェンジできなければ、世界で生き残れない。

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