炭素繊維需要の拡大が続いている。航空機市場を見ると、足元では墜落事故などネガティブなニュースもあるが、ボーイングなどメーカーが抱える受注残は多く、「787」も月産14機体制を継続。一方、風力発電の風車ブレードは、さらなる大型化が期待されるほか、自動車向けの開発も進む。世界需要は2017年約7万トン、18年約8万トンで、今も年10%程度の成長を保っているとみられる。
 このほどフランスで開かれた世界最大の複合材料展示会「JECワールド」にも世界中から数多くの出展社、来場者が集まった。日本勢も東レ、帝人、三菱ケミカルといった炭素繊維大手のみならず、現地法人の出展を含めて数十もの化学や繊維川中、機械各社がブースを構え、自社製品をアピールした。
 一方、航空機向けプリプレグ世界大手であるサイテックを買収したソルベイが、同展示会で自動車用素材を積極的にアピールするなど、有力メーカーが自動車向けコンポジットに強い期待を持っていることをうかがわせた。電気自動車(EV)の航続距離を延長するには、電池の進化に加えて車体の軽量化が大きな役割を果たす。欧州はじめ世界中で進む燃費規制、CO2排出規制をクリアするためにも軽量化は必須。軽量化のための強い武器が炭素繊維を用いたコンポジット(CFRP)だ。
 だが日本の自動車業界においては「活発」といえるほどの動きには至っていない。東京で今年2月開かれた「複合材料セミナー」では、ホンダの技術者が「コストをみてもカーボン(CFRP)を量産車に採用するのは難しい」と、現状でも量産車への適用拡大には高いハードルがあることを吐露した。一方、軽量化以外の機能を付与することでコストアップ分を吸収することを目指していることも明かした。具体的テーマとしては、タイヤホイールをCFRPで強化することにより、大幅な軽量化とともに振動抑制による操縦安定性の向上、つまり快適な乗り心地を追求している。この価値が評価されれば、乗用車への採用のハードルを一つ下げられることになる。
 日本の自動車大手では、内製化を目指してきたCFRPの設計・成形をティア1に譲り「CASE」などに資源を集中させる動きも出ているようだ。逆に言えばティア1と一体となって取り組めば、日本の自動車への採用を加速できるともいえる。日本を発祥とする炭素繊維の出口は長らく欧米市場が主体だったが、軽量化以外の機能を盛り込んだ材料の開発などにより、CFRPが日系企業に大量に使われることを期待したい。

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