ガソリン車・ディーゼル車の新車販売を規制する動きが強まっている。世界最大の自動車市場となった中国をはじめ、欧州や北米で2030年以降の販売禁止を表明する国・地域が相次いでいる。国内でも50年のカーボンニュートラルの実現を標榜する管政権が、グリーン成長戦略において遅くとも30年代半ばまでに乗用車の新車販売で電動車100%を実現することを盛り込んだ。温暖化が原因と推測される異常気象が増えるなか、環境負荷低減を目的としたEV(電気自動車)化の取り組みは必要だが、実現に向けては車体価格の低減や充電・水素充填施設といったインフラ整備が欠かせない。
 車体価格ではバッテリーコストの削減が必須。リチウムイオン2次電池(LiB)では単電池素材コストで正極材料の占める割合が20~30%程度と言われており、現在主流のコバルト酸リチウムは資源の偏在性、希少性、重要性に由来する高騰の懸念がされている。予想される需要拡大に対応するには、リン酸鉄リチウムなどの、より安価な正極材を使ったバッテリーの採用をはじめ、用途・使用環境や販売価格に応じて燃料電池や開発中のマグネシウム合金2次電池などとの使い分けを進めるべきだ。
 インフラについてはガソリンスタンドに代わる充電・充填環境を構築する必要がある。個人ユースの場合、集合住宅などをはじめ自前の充電装置を設置できない消費者が多く存在することから、安心して使える環境が整わなければ購入に二の足を踏むケースが予見される。
 これら課題に対応するため、ガソリン車・ディーゼル車の販売禁止に向けては事業系を先行させる格好で市場を育成していくべきだろう。安価な正極材や新たな2次電池の開発と並行して物流業者や宅配業者、路線バスやタクシーなどの公共交通機関への導入を補助金や税制上の優遇制度などで後押しし、自動車メーカーにおける用途・使用環境に応じた車両開発を加速させる。また自動車メーカーは、そこで得た知見を基に幅広い消費者ニーズに対応可能な商品ラインアップを整備する。
 また事業所などの法人需要を軸に充電・充填装置の規格化を進めるとともに、量を確保してコスト低減につなげる。同時に実際の使用状況をベースにビジネスモデルを構築し、それを生業とする事業者を育成する。
 いずれにしてもテレビにおけるブラウン管から液晶への置き換えと異なり、ガソリン車・ディーゼル車からEVへの転換はコスト・使い勝手ともに消費者にとってハードルが高い。政府には軽自動車など生活の足を奪うことのないよう求めたい。

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