日本のベンチャー投資が拡大している。AI(人工知能)など先端技術を活用し、あらゆる産業で新たなビジネスモデルが創出されようとするなか、自前の研究開発だけでなく、外部資源を積極活用するオープン・イノベーションが定着してきたことや、企業によるスタートアップ支援の重要性への認識が高まっていることが背景にある。ただ「素材」への投資は、まだまだ欧米に比べて小さい。将来の競争環境に影響しないかが懸念される。
 一般財団法人のベンチャーエンタープライズセンターの調べによると、2017年暦年の日本からの国内外ベンチャーへの投資額は計1787億円(1374件)と、前年に比べて22・9%増加した。このうち国内向けが同32・3%増の1257億円(1151件)、海外向けが同4・7%増の529億円(223件)と、とりわけ日本のベンチャーに対する投資が活発になっている。
 10~12月の国内ベンチャーへの投資を業種別に分類すると、IT関連が45・9%、バイオ・医療・ヘルスケアが23・8%、工業・エネルギーが17・9%と続く。残念ながら、素材や化学といった業種分類は設けられていないが、ベンチャー投資に詳しい関係者は「素材の比率は数%程度」と話す。この水準でも従前に比べて額や件数は拡大しているという。
 研究成果や新技術などを工業化水準に引き上げるには、おおむね10億円の資金を要する。資金力のないベンチャーにとり、このハードルを乗り越えることが最大の課題で「死の谷」とも呼ぶ。市場リスク、技術リスクも高く、化学大手が及び腰になるのも無理はない。ただ、ここには有望な技術シーズが眠っている。素材産業にとっては成長の種になる可能性があり、大手企業とベンチャーの連携も徐々に広がってきた。
 もっとも、大手がベンチャーの手を借りねばならない事情がある。ある化学大手の研究開発トップは「画期的な新技術を見出したとしても、世界には同じことを考えている人間が少なくとも5人いる」と話す。強固な参入障壁やビジネスモデルを築いて開発競争を一番で抜け出すのは、単独では難しい。欠けたピースを埋めるためにもベンチャーとの連携は欠かせない。
 ようやく広まってきた日本のベンチャー投資だが、海外は先を行く。米国の年間投資は約7兆円超、中国が約2兆円と、日本を大きく上回る。素材分野の投資は米国が日本の20倍、欧州が1・5倍の規模。将来、この差が日本の素材産業の国際競争力に響いてこないか心配だ。

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