アジアで石油精製と石油化学事業を一体運営する流れが加速している。製油所で得られるナフサや芳香族を石化製品の原料に活用し、垂直統合による競争力を最大化する狙いがある。背景にはEV(電気自動車)の普及にともなう石油製品需要の減少を織り込んだ動きや、サウジアラビア、マレーシア、インドネシアをはじめ資源国が「脱原油輸出依存」の方針を強く打ち出したことがある。
 石油メジャーの一角を占める英BPは2月、2030年代後半までに原油需要がピークを迎えるとの予測を発表した。40年までにEVが世界全体で3億台に増えるとみる。近年、同社や英蘭ロイヤルダッチ・シェルなど石油メジャーが製油所運営から手を引く動きが目立つ。
 代わって製油所の運営を引き受けるのは資源国・新興国企業だ。16年にシェルからマレーシアの製油所を買い取ったのは中国の国営化学企業。中国では今後5年間、大型の石化投資が相次ぐ見通しだが、恒力石化(遼寧省)のプロジェクトをはじめ製油所一体が多い。サウジ国営サウジアラムコはマレーシア、インドネシアで製油所投資に乗り出し、インドでも投資を検討中。いずれも石化が一体だ。
 エチレン原料の多様化も垂直統合を加速させる要因だろう。近年はナフサから中東および米国のエタン、中国の石炭やメタノール、さらにC3・C4LPG(液化石油ガス)まで原料の選択肢が広がった。価格競争力は中東産エタンが最も高く、供給過剰気味のLPGも割安感が強まっている。
 これら状況下、ナフサユーザーが収益力を最大化する近道が製油所との統合強化というわけだ。動きはアジア全域に広がる。中東ではエタン産出が減少傾向にあり今後、製油所一体でエチレン原料をナフサにシフトする可能性が高い。エタンベースでは困難だったC3・C4系誘導品の増産機運も高まろう。フィリピンでは石油精製最大手ペトロンを傘下に持つ財閥サンミゲルグループが、石化事業への参入を検討している。
 シンガポールでは米エクソンモービルが他石油メジャーと一線を画し、精製・石化統合を強めて収益性を高めようとしている。現地紙によると、タイでも自社製油所に隣接してナフサ分解炉を設ける可能性がある。
 石油製品の需要減少に直面するのは日本の製油所も同様。石油化学メーカーも国内産業を支えるには一定規模の生産量が必要だが、中国のような規模の経済は働きにくい。こうした制約下で互いの競争力を高めるため日本でも精製・石化の一層の統合を進めるべきだ。

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