アジア太平洋で国営石油会社の化学事業進出「クルードtoケミカル」(CtoC)が加速している。一部株式の上場を控えるサウジアラムコはマレーシアで近く、同国国営ペトロナスと合弁で製油所と石油化学コンビナートを立ち上げる。インドネシア国営プルタミナはアラムコや露国営ロスネフチとの製油所・化学投資を抱え、インドでも近年、多くの国営石油会社が化学品増産投資を重ねている。
 国営石油・ガス会社は国の税収や雇用を支える存在。例えばペトロナスの法人税や配当は国家収入の2~3割を占める。石油製品需要の減少にともなう、こうした企業の収益減は国の経済全体に影響を及ぼす。また英IHSマークイットによると、2040年にかけて石油製品の世界需要量がほぼ横ばいで推移するとみられるのに対し、石化製品は7割伸びる。ナフサや天然ガスなど原料の販売でかかわってきた化学分野に進出し、一貫生産体制で収益力を高める動きは市場にも評価されている。
 CtoCを先導するアラムコは原油からナフサを経ずにオレフィンを得る技術を開発中で、サウジ国営化学会社SABICも子会社化する。UAE(アラブ首長国連邦)・アブダビ首長国のアブダビ国営石油(ADNOC)は今年10月、インドで独BASFによるプロピレン(C3)系製品投資に出資すると発表した。ADNOCはインドネシアや中国、インドでも製油所・化学品投資に意欲をみせる。タイ国営PTTは、一度見送った化学PTTGCと、石油精製IRPCの両子会社合併を再検討する可能性がある。
 一方、韓国SK化学のように中国で製油所を買収し化学側から原料からの一貫生産体制を構築するケースはあるものの、化学企業がエチレン/エタン分解炉からファインケミカルにいたる総合的なバリューチェーンを維持することは市場から評価されにくくなっている。米ダウとデュポンが統合のうえ、事業分割にいたったのは株式市場の声を反映したものだ。
 前出のBASFによる印C3投資もプロパン脱水素でプロピレンを生産する。流動接触分解装置(FCC)によるものも含め、化学企業のC3系投資は今後、分解炉を「迂回」するプロジェクトが増えるとみられる。
 CtoCには、とくにプロジェクトの多い中国で芳香族などが供給過剰に陥り、これがアジア市場全体に影響を及ぼすなどのリスクもある。一方、日本化学企業にとってはライセンス供与や、樹脂コンパウンドをはじめとする川下での機能化学品投資の機会が増えるため、動向を注視すべきだ。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る