ドイツの化学企業がイノベーションの創出に向けて多彩な活動を続けている。とくに目を引くのは、社内からアイデアを募って新たな事業の可能性を追求する取り組みだ。
 多くの企業がオープンイノベーションを重視している。企業の枠組みを超え、幅広い知見や技術、ノウハウなどを得る仕組みの構築を目指している。これまでは、どちらかというと社外にイノベーションの芽を見出す活動が目立った。
 実際、エボニック インダストリーズは異業種企業とのネットワーク作りや、大学・研究機関との協業を進めている。異業種とのネットワークは着実に広がり、シーメンスの電解技術を使って水と二酸化炭素を水素と一酸化炭素にし、エボニックの発酵技術で一酸化炭素を含むガスをベースにして、化学品を生産するプロジェクトがスタートしている。
 大学との協業も進み、日本では東京大学と戦略的パートナーシップを締結している。「東京大学エボニック・スカラーズ・ファンド奨学金」の提供や、独デュースブルグ・エッセン大学での「Evonik Lecture」と題する合同コロキウムの開催など、実績を積み上げている。
 こうした活動を続けるエボニックが、社内でイノベーションの芽を育てる取り組みを始めている。ソーシャルメディアを活用、複数のプロセスを経てアイデアを練り上げ、選定するもので、起業家精神の醸成にも役立つ。1位のアイデアを考案した社員は1年間、その具体化に専念できる。すでにインキと建築関連が取り上げられてプロジェクトが進展中だ。
 コベストロも、これに似た活動を展開している。事業アイデアを競う「スタートアップ・チャレンジ」と呼ぶもので、このほど最終選考を経て優勝チームを決めた。優勝したのは、主に自動車業界で塗工機がより速く効率的に作業できるようにする技術を提案したチーム。全員がコベストロの社員で、通常の業務から1年間離れ、具体化に取り組むことができる。最大100万ユーロ(約1億3000万円)の資金が提供される。
 スタートアップ・チャレンジは、社員の創造性と起業家精神を高めるために開始した。革新的なアイデアを実現可能なビジネスモデルに発展させることを目指しており、世界中から約600のプロジェクトが提出されたという。
 エボニックは3万6000以上、コベストロは1万6000以上の社員を抱える。これだけの社員が起業家精神を高めれば大きな資産になるに違いない。

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