日本試薬協会の主催で先週開かれた「試薬の日」記念講演会で、岸本忠三大阪大学元総長の講演を聞いた。演題は「インターロイキン6の発見と抗体医薬の開発」。この抗体医薬とは中外製薬の「アクテムラ」であり、関節リウマチなどで世界100カ国以上で治療に使われるブロックバスターである▼講演はその研究の学術的な話が中心だったが、随所に織り交ぜられるユーモアあふれる話で聴講者を惹きつけた。日本の試薬の供給体制は、スピードも品揃えも品質も世界最高レベルと話したかと思えば、だからちょっと高い、と言って笑いを誘う。また、総長のときにいちばん一生懸命やったのは卒業式と入学式のスピーチだけで、それ以外は何もしていないとニコニコする▼困難に屈せず研究をやり抜く熱意はどこから来るのかという会場からの質問には、医者として患者を救いたいという強い願いだと答えた。基礎研究だけでなく、臨床現場で患者を診てきたことが自分の研究の強みだという▼これはと思った人材を獲得したいときには、「ここにくれば君のためになる」ではなく、「ここは君を必要としている」と熱く語れという話も印象的だった。「大阪大学は君を必要としている」。恩師の山村雄一博士の一言で、米国の大学から阪大に戻った岸本博士は、その後、阪大一筋で現在に至る。(19・3・13)

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