「伝説のロックバンド『クイーン』のリードボーカル、フレディ・マーキュリーの華やかな成功と波瀾万丈の人生…」。こう書き出された刊行物がある。発行日はほぼ1月前の4月1日。音楽やその他趣味の雑誌ではない▼日本貿易会が毎年発行している『日本貿易の現状』2019年版である。仕事の資料として読み始めたら、意表をつかれた。お堅いイメージの統計集の序文がなにゆえクイーンで書き出されたか▼新しいことに挑戦し続けるのがクイーンの音楽活動のテーマだったという。「俺たちは二番煎じのような曲は作らない」と言い放ちもした。その代表作ともいえるのが「ボヘミアン・ラプソディ」。オペラとロックの融合を試み、さらに曲の長さは3分が主流の時代に6分を超えた。結果は吉と出る。英国史上最大のセールスを記録した▼さて、貿易の現状とクイーンの関係。序文執筆者によると、1976年の創刊から続いていたカタチを見直し、判型を大きくするなど見やすくするための工夫を凝らすささやかな挑戦をした、というわけだ。ただ同氏自ら、この結びつけは「無理やり感がある」と吐露している▼膨大なデータの森に踏み込んでいく前、やや重い気分に領されていたが、ボヘミアンのメロディーが去来して、さあ行けと背中を押されたような気がした。(19・5・15)

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