タイがグローバル市場に向けた輸出拠点として存在感を高めている。東南アジアや東アジア向けの食品や農作物、自動車、電子・電気製品の輸出を柱に経済成長を遂げたタイだが、輸出先は今やインドやメキシコ、中東アフリカまで拡大。化学品もその例外ではない。米中間の関税戦争が激しさを増すなか、代替輸出拠点としてのメリットを期待する声もある。
 タイは2017年後半から本格的な景気回復局面に入った。同国経済社会開発庁(NESDB)によると、輸出額も18年1―3月期にかけて7四半期連続で増加。自動車や家電部品の輸出先は北米や中東アフリカまで広がり、素材業界でもタイを橋頭保にインド開拓を進める企業が増えた。日系物流企業は東南アジア全域からタイにモノを集め、航空便や船便で欧米にまとめて輸出するサービスを本格化させている。
 日系化学では三菱ケミカルのメチルメタクリレートや三井化学の高純度テレフタル酸、JSRの溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオンのC5系樹脂などは現地生産品の輸出比率がいずれも5割を超える。ポリプラスチックスやDICは、インド顧客の製品開発をタイから支援する。
 タイ政府によると、重点開発地域のラヨンなど東部3県では18年6月までの2年半で民間投資が累計6700億バーツ(約2兆3000億円)に達した。現地化学大手PTTグローバルケミカルとSCGケミカルズのエチレン増産投資を控え、化学業界も再び投資ブームに沸く。
 進出する企業の多くは、新工場をグローバル輸出拠点と位置づける。投資拡大にともない、現地の危険品倉庫需給がひっ迫し、同国最大の商業港であるレムチャバン港(チョンブリ県)の周辺では土地確保競争が激しさを増す事態も生じている。
 米中間の関税戦争は激化するなか、タイにはそのメリットを享受する余地がある。化学物質管理規制強化や人件費高騰と相まって中国からの工場移転が進んだり、米国と中国向けの輸出が増えるケースも考えられる。ある日系化学品専門商社の駐在員は「中国の顧客から、タイへの工場移転に関する相談が増えている」と話す。
 東南アジアから中国に輸出された材料が加工・組み立てを経て米国に向かうことも多く、長い目でみれば関税戦争が域内企業にプラスに働かない可能性は高いが、いずれにしろ自動車や家電のサプライチェーンが成熟したタイだけをみていては新たなビジネスは創造しにくい。同国を拠点にグローバル輸出戦略を練る時期に来ている。

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