経済同友会が先ごろ示した政策提言のなかで「新型コロナウイルス感染症の拡大による介護現場への影響」に関する内容が目を引いた。同友会が5月1~14日に実施した地方公共団体へのアンケートによると、新型コロナの影響として「マスク、防護服、消毒液などの衛生用品の不足」「(介護の)利用自粛、事業の縮小・休業にともなう影響」などが挙げられた。
 また介護の現場から、さまざまな意見を吸い上げた。例えば「政府から一律の布マスクが提供されたが、対面の福祉現場では衛生面から布マスクは使えない」「アルコール消毒液が届かないことが多々あった」「国の通達を転送するだけのメールが一日に何通も届くが、『(通知に対して)どうしていけばよいか』という具体的な方策は各事業所に任せられている」「クラスターが発生すれば、利用者への安全配慮、事業の継続などに関するリスクは介護事業者が一手に負うこととなる。必要な法整備を行い、緊急時は政府が介護事業者に対する保障や支援をしなければ、福祉業界で働こうと考える人がいなくなるのではないか」-等々である。
 こうしたことを踏まえて同会では、国は(1)事業継続計画(BCP)策定の促進(2)緊急時の人材不足に対応する予備介護福祉士制度の創設-を行うべきと指摘している。
 新型コロナは高齢者の致死率が高く、高齢者と身体接触の多い介護サービスでは感染リスクが大きい。2014年に新型インフルエンザに対応したBCPフォーマットが策定されているが、(1)感染力の強さ(2)高齢者のリスクが高い(3)職員が感染した場合、事業継続が困難-といった新型コロナの特徴を踏まえた見直しが必要だ。
 「まず政府がBCPのフォーマットを作り、各都道府県、保険者が執行体制を整える。その際、介護施設だけを視野に策定するのではなく、医療機関との連携を前提とすべき」-。提言では、かなり踏み込んだ見直しを政府に求めている。
 また通常は別の仕事に従事していても、緊急事態が起これば介護に従事する「予備介護福祉士制度」という新制度の創設を求めているところも興味深い。新型コロナのような大規模な感染が発生した時には、介護施設などの複数の職員が陽性化し、サービス提供を維持できなくなるケースが想定される。こうした状況に備えるものだ。
 提言では最後に、介護に従事する人々を社会全体で支えていく必要があると主張している。もっともな意見ではあるが、緊急時に限らぬ、基本的考え方として強く意識しておきたい。

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