シニアベンチャー。定年後、自らが開発した研究成果を世に役立てたいと起業する人は少なくない。多くがものづくりベンチャーだ。湘南先端材料研究所の谷本敏夫社長もその一人▼湘南工科大学の学長を務め、複合材料の研究では第一人者。退官後の悠々自適の生活より、自らが開発した長繊維セラミックの事業化に余生をかけた。市場は航空機や自動車のエンジンだけに一社で工業化を完結できない。起業後すぐにJAXAの共同研究プロジェクトに選ばれるほどの技術力の高さに企業の注目も集まる▼そうした企業とパートナーを組んで事業化したいというのが谷本社長の考えだが、懸念がある。特許や企業間契約の実務に明るくないことだ。その分野の専門家が前に並ぶ会合は研究一筋にやってきた技術者には心地よいものではない。米国では、ベンチャーは研究に専念、特許や契約など法務はプロがいて外部との折衝にあたる仕組みが広がっている。資金だけではないエコシステムが力を発揮している▼谷本社長は昭和20年生まれ。保有する技術は特許だけではなく、多くのノウハウで構成されている。高齢でその人ひとりに技術のエキスが詰まっているベンチャーは少なくない。研究成果がきちんと評価され、それを守る仕組みの構築が急務なのではないか。時間はあまりない。(18・4・13)

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