化学企業がスタートアップなどの新興企業と協業し、非連続的なテクノロジーを獲得したり画期的なイノベーションを取り込もうとする動きが加速している。保有技術をベースに新製品開発するような従来型の成長戦略に限界がみえるなかで、ゲームチェンジを狙うスタートアップとの補完関係により、新たな成長を目指そうというものだ。異文化との遭遇を機に、化学企業が新たな課題解決のソリューションを生み出すことを期待したい。
 積水化学工業や三井化学など化学大手は、新興企業との協業や出資を目的とする募集イベント、いわゆるアクセラレータープログラムを通じ、新規事業を開発しようとしている。スタートアップなどが持つ技術やアイデアと、大手企業が持つ経営リソースとを掛け合わせるオープンイノベーションを通じて、次世代のビジネスモデル創出を目指している。社会そのものが大きな変動期に突入しつつあるなかで「従来型の成長戦略だけでは生き残っていけない」という危機感が、化学大手各社のなかにあるためだ。
 この危機感の背景には、いくつかの流れがある。一つは「コネクト」をキーワードとする新たな社会への対応だ。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)によるビッグデータ活用など、急速に進むICT(情報通信技術)の革新を早期に取り込む必要がある。もう一つは、モノが溢れ、顧客ニーズが細分化している現代においては、大企業の成長に十分に貢献するような新規事業の創出が難しくなっていることがある。「作れば売れる」という状況は一部の新興地域に限られてきている。
 さらに近年、国連のSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定における温室効果ガス大幅削減の国際合意などを受け、循環型社会の構築が強く意識されるようになったことがある。化学産業は「化石資源を原料に大量のエネルギーを消費してモノを製造するスタイルがいつまで続くのか」「大量に廃棄されるプラスチックなどの問題をどう解決するのか」といった重い課題に直面している。
 化学産業はそもそも人類の課題を解決するような新技術、新製品を生み出すことで発展してきた。一方で、スタートアップなどの新興企業は、斬新なアイデアや非連続的なテクノロジーを世に問い、さまざまな分野でゲームチェンジを起こそうという意欲に溢れている。化学企業が新興企業と協業することにより、新時代を切り拓くような重要なイノベーションを創出し、社会や産業の閉塞を打ち破る動きとなるか、注目したい。

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