製造業でIoT(モノのインターネット)やビッグデータ解析、機械学習などの技術を活用した取り組みが注目されるようになって数年が経つ。これら最新のデジタルツールを駆使し、新たな価値の創造を目指すデジタルトランスフォーメーション(変革)により、これまで考えられなかった異業種協働が組まれ、付加価値の高い製品やサービスを生み出している。
 長年にわたり、ものづくりをリードしてきた日本の製造業だが、IoT活用について「言葉だけが独り歩き」「当社に関係ない」「長年の蓄積で同様のことが実現できている」といった声も聞かれる。インダストリー4・0やインダストリアル・インターネットによる「新ものづくり」で巻き返しを図る欧米に比べ、いぜん及び腰だ。しかしデジタル変革の波は確実に押し寄せている。この波をうまくとらえることができなければ、将来にわたって成長し続けることが難しくなるのは確か。
 マイクロソフトは、アジア太平洋地域の製造業がデジタル変革を推進すれば、年間成長率は1%に達し、2021年までにGDPを42兆5000億円押し上げられると発表した。同社がスポンサーとなって調査会社のIDCが域内15市場の製造業のビジネスリーダー615人に聞いたもの。すでにデジタル変革を推進している企業は昨年13~17%の業績改善を達成、3年間で40%の改善を見込む。
 またアクセンチュアが世界12カ国の化学メーカーに行った調査では、8割が化学プラントのデジタル化に大規模な投資を実施しており、85%が「今後3年間で投資を増やす」と答えている。また、すでに95%がデジタル技術が収益に与える効果を実感しており、50%以上が2ケタの改善を実現している。
 デジタル変革は、クラウドを活用したスモールスタートが可能。必要なサービスを選び、使用した分だけ料金を支払うビジネスモデルも登場するなど、新しい取り組みを始める際のハードルは低くなっている。とはいえデジタル技術は、あくまでもツール。顧客への新たな価値の提供に向け、自身にない技術や特徴を持つ会社と組み、自らの強みと融合し、新たな成長の推進力にしていくことが重要だ。企業の合併・買収(M&A)を含めた幅広いアライアンスも必要になるだろう。
 ただしデジタル変革によって「つながる工場」に進化する一方で、サイバー攻撃のリスクが増大することも忘れてはならない。それに対する備えはもちろんだが「内部は安全」という思い込みを排除し、念には念を入れた対策が不可欠となる。

PDF版のご案内

新聞購読のご案内

社説の最新記事もっと見る