IT業界だけでなく、あらゆる産業にデジタル化の波が押し寄せている。そのなか各社がAI(人工知能)、機械学習、IoT(モノのインターネット)の活用に取り組み、既存事業のプロセス変革や新規事業・サービスの創出を目指している。
 IoT機器やセンサーを使って取得したデータを解析し、企業や組織の課題解決につなげる取り組みは、もはや珍しくなくなった。ハードウエアが進化して計算・処理速度が飛躍的に高まるとともに、IoTが身近で使いやすいツールへ発達したことが背景にある。
 一方で「データサイエンティスト」と呼ばれる専門人材は現在も1000人程度にとどまるとされる。日本では“理系離れ”により、理系を専攻する大学生が少ないうえに、データ解析で必須の統計学や数理学を修めた卒業者は年間4000人程度。その多くがIT系やフィンテック関連に進むため、最初から化学などの製造業で働こうと考えるデータサイエンティストは、さらに少なくなる。
 しかし第4次産業革命を迎えようとしている現在、製造業こそデータ解析の専門人材が求められる。研究開発の現場では、これまでかかわりのなかった異業種企業とデータをやり取りしながら新たな製品やサービス、事業を短期間で開発することが求められる。生産現場では、プラントの安全・安心を担保しつつ高品質の製品を、より多く生産するオペレーションが重要になっている。機械や設備のメンテナンス、サポートの現場でも、故障や異常の予兆をできるだけ早く検知し、いかにダウンタイムを減らすかが課題だ。
 こうした状況を受け、文部科学省も産学連携でデータ関連人材の育成を強化しているが、実際に成果が表われるまでに、ある程度時間がかかるだろう。
 企業も専門人材の確保だけでなく、AI・ロボットの導入による業務の自動化や、データ解析に知見を持つ企業との協業などに努めなくてはならない。加えて自社内のエンジニアを高度化する必要もある。工場や現場のデータを活用してマネジメントに生かせる人材、論理的に企業や組織の課題を把握して解決することで価値を提案できる人材を育てるのだ。
 自動化が進んだスマート工場ではIoT機器やロボット、アプリケーションも部下となる。これらの部下が示す情報が正しいのか見極めるエンジニアリング力やデータ解析力が必須となる。データサイエンティストや高度な仕事をするエンジニアに興味を持ち、製造業で働きたいと考える学生が増えてくることを期待したい。

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