米ノババックスは、英国と南アフリカで行った新型コロナウイルスワクチンの臨床試験の中間結果を発表した。両国とも昨年末頃からとくに感染力が高いとされる新たな変異種が急増している地域。英国治験では、同国などで増えた変異種に対しても従来型と同等の有効性が確認された。南ア治験では、全体の有効率は約50%にとどまり、従来型の感染歴があっても南ア型の変異種に感染するリスクが高いことも示唆された。同社は南ア型に対応したワクチンの開発に着手し、今年6月までに治験を始める予定。英国、南ア型変異種に対するヒトの臨床試験データが発表された、初めてのコロナワクチンになる。

 英国治験は、約1万5000例を登録して実施。2回接種し、発症者が62例に達した時点の中間解析を行った。発症例の内訳はワクチン群6例、プラセボ群56例で、発症予防効果を示す有効率は89%。ゲノム解析が行われた発症例56例のうち、英国型変異種に感染したのはワクチン群4例、プラセボ群28例で、英国型変異に対する有効率は約86%となった。発症例が100例以上に達した時点で最終解析を行う。この中間結果などを根拠に、英国では段階的に申請データを提出するローリング申請を始めた。

 南ア治験は約4400例を登録。うち3割近くは過去に新型コロナに感染した症例で、1割はヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性者だった。全体の発症例はワクチン群15例、プラセボ群29例で有効率49%。米国当局などが提示している有効性の目安を下回った。HIV患者群に限ると60%だった。ゲノム解析が行われた27例中25例は、南ア型変異種の感染例だった。同社は従来型の感染歴があったとしても南ア型変異に感染しやすいと分析している。

 ノババックスは、南ア型に対応した新規ワクチンの開発にも着手。追加接種するブースター・ワクチン、または2種類のウイルス型に対応した2価ワクチンとして開発する考えで、数日中に開発品を決定する。4~6月期に臨床試験を始める。

 治験薬準備の遅れで開始が遅れた米国・メキシコの治験は、1万6000例の登録が完了した。2月中旬には目標とする全3万例の組み入れを完了させる予定。発症例が72例に達した時点で中間解析を行う。

 日本では武田薬品工業が開発権を持っており、2月20日頃から国内治験の症例登録を始める予定。海外治験データも活用して承認申請し、最短で今年10月以降の供給開始を目指している。

 ノババックスのコロナワクチンは、独自のナノ粒子技術を応用した遺伝子組み換えたんぱくワクチン。アジュバントを使うため抗原量が少なくすむことから、ワクチンを再開発するとしても早期に量産体制へ移行できるという。富士フイルムやAGCなどの子会社が製造協力している。

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