ハリマ化成グループは、プラスチック基材に高密着性を発揮する水系エマルジョン樹脂を開発した。トール脂肪酸を変性させ、アクリル系微粒子の表面に付加、親和性を向上させた。独自技術により乳化剤を使わず、粒子径を約100ナノメートルとし、高いレベリング性も実現した。水系インキのバインダー用途では、プラ基材に対して従来にはない密着性を確認している。環境負荷低減の観点からグローバルで需要が期待できる同用途を軸に、2021年度の実績化を目指す。インキにこだわらず用途を開拓する考えで、オンラインで開催中の「ケミカル マテリアル Japan 2020」でも紹介。塗料に加え、水系粘着剤への展開も模索する。将来的に、年間売上高100億円規模の事業に育てる方針だ。

 プラスチック基材の中でも、とくにオレフィン系は水をはじきやすく水系樹脂との親和性が低い。開発した樹脂は、アクリル系が塗膜の耐性を担う一方で、表面のトール脂肪酸がプラ基材に対する接触角を下げる。さらに密着性を疎外する乳化剤は不使用。約100ナノメートルという粒子径によりパッキング性が高く、塗布後の粒子同士の隙間も小さい。

 同社ではもともと、環境への配慮からニーズが高い水系インキ用途をターゲットに開発を進めてきた。バインダー樹脂として、顔料、顔料分散樹脂と合わせることで、プラ基材に対してこれまでにない密着性を確認している。

 水系インキはグラビアに加え、フレキソ印刷で、食品包装などのフィルムへの適用が進んでいる。撥水性などのバリアコートを施した紙への応用も増加するとみられる。欧米に加え、中国での市場拡大も見込まれる。

 子会社である米ローターのオランダ、ベルギーの拠点も活用。日本および欧州のインキメーカーですでにサンプルワークを進めている。今後、ニーズに合わせた物性の調整に加え、中国メーカーへのアプローチにも取り組んでいく計画だ。

 水系粘着剤用途も視野に入れている。同用途を想定した耐荷重試験を実施。ポリプロピレン(PP)板同士の貼り合わせでは、2kgf(重量キログラム)までの耐荷重を確認した。またPPに加え、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ステンレス(SUS)などを組み合わせた異種材料の同試験も良好な結果となった。

 開発した水系エマルジョン樹脂はアクリル系樹脂をすでに内包。表面のトール脂肪酸が代替するため、粘着性付与剤(タッキファイヤー)を添加せずに水系粘着剤に応用できる。今後、同用途に合わせたチューニングも推進していく。

 同社では、自社技術の用途を自ら限定せず、機能を切り出して顧客のニーズとの合致を模索する方針を打ち出している。「ケミカル マテリアル Japan 2020」などを通して水系エマルジョン樹脂もさまざまな用途を検討していく考え。

 同展示会では金属用接着剤なども紹介。耐溶剤性を持ちながら、水に漬けると、接着を解除するまれな特性を持つ。研究開発カンパニー長を務める西岡務常務取締役は「顧客とのコミュニケーションのなかで、製品の“易解体”など、具体的な用途を探求していきたい」と話す。

開発した水系エマルジョン樹脂(左)の粒子径は約100ナノメートル

PP板の耐荷重試験では2kgfまでの耐荷重を確認

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《ケミカル マテリアル Japan 2020-ONLINE-》

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