世界最高齢の公選首相が誕生した。マレーシアで先月行われた下院選で野党連合の希望連盟が与党連合の国民戦線を破り、総議席の過半数を獲得した。1957年の独立以来、初の政権交代となる。野党連合を率いるマハティール元首相が2003年以来、15年ぶりに首相の座に返り咲いた。新政権が公約を実行すると財政赤字の拡大や公的債務の増加につながる恐れが指摘されており、経済面では必ずしもポジティブではない。しかしマハティール氏の辣腕によって中所得国の罠を抜け出し「東南アジアの優等生」として飛躍することに期待したい。
 今年93歳となるマハティール氏は、2003年に首相を退任するまでの22年間、日本を手本に工業化と経済成長を実現した実績がある。一方、華僑の経済的優位性に対抗し、マレー人の地位向上を図る優遇政策「ブミプトラ政策」を推進。これが国民の7割近くを占めるマレー系人民から強く支持され、今回の選挙勝利にもつながった。
 マレーシアの1人当たりGDPは現在1万ドルを超えた。東南アジアではシンガポール、ブルネイに続いており、途上国が多い域内では経済発展の進んだ国だ。しかし「中進国の罠」に陥った典型として語られることも多く、先進国入りを目指した発展が最重要課題となっている。また98年以降、財政赤字が続いており、その再建も重要テーマの一つとなっている。
 そうしたなかでマハティール氏は、15年に導入された物品・サービス税(消費税に相当)の廃止、14年に廃止された燃料補助金の復活、最低賃金の引き上げ、低所得者を対象としたヘルスケア制度の導入、国立大学の授業料無償化―などを選挙公約に掲げて勝利した。ただ物品・サービス税は国の歳入の2割弱を占めており、また燃料補助金を復活させれば財政収支は大幅な悪化が避けられない。
 さらに国際競争力向上の妨げとなっているのがブミプトラ政策である。経済活動のほか、公務員の採用や国立大学への入学でマレー系人民への優遇政策がいまだに実施されて高コスト体質が定着。国民の競争心やモチベーションを削ぐ格好となっている。しかしマハティール氏はマレー系人民の代弁者として同政策を堅持せざるを得ないとみられ、抜本的な改革は期待できないのが実情だ。
 経済発展や競争力向上への成長戦略は、まだ見えない。前回の首相就任時は強権を振るったが、時代背景は大きく変わっており、同じやり方は通じないだろう。マハティール氏が、どのような政策を、どう推し進めるのか注目される。

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