昔、高名なアナリストに「人間が経済を完全にコントロールできるようになる日がいつかはくるのでしょうか」と訪ねたことがある。そのアナリストは一瞬、何を問われているか分からないようだった。しばらくたって「そんなことできるわけないじゃないですか」と、それでもまだよく質問の意味が理解できないままのようなうつろな目で答えた▼もっと昔の子どもの頃。テレビのニュースで、ミカンなどが豊作すぎて値崩れしたとかで、ブルトーザーで大量のミカンを穴に埋めているというニュースをよくやっていた。子供心にもなにか不条理を感じたものだ▼ミカンの穴埋めこそ最近はあまり聞かないが、産業記者に従事しているいま日常的に耳にするのは、需給という言葉だ。みんなが工場を一斉に作ったので製品が余り、値段が下がって赤字になってしまった。あるいはその逆に、モノが足りなくて価格が暴騰、といったように▼もっと合理的にできないものかと思うが、一方でそれは永遠に無理、あるいは”見えざる手”ではないが、”市場”に任せるのが結局一番良いという人もいる▼人間の知能を遙かに上回る人工知能が遠からずできるという。センサーやカメラで今よりも物事を精密に把握できるようにもなる。それでもヒトは、本当にミカンの穴埋めを続けていくしかないのだろうか。(18・5・10)

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