2022年は世界鉱物年。ユニセフが制定したもので、結晶学の父、鉱物学の父と呼ばれたフランスの化学者ルネ=ジュスト・アユイ(1743~1822)の没後200年を記念している。アユイは「結晶は原子や分子が並ぶ小さなユニットの繰り返し」を提唱するなどの功績がある▼鉱物から得られる金属元素(メタル)の資源問題は、電気自動車(EV)の市場拡大、ウクライナ侵攻など地政学的リスクの顕在化を受けて関心が高まっている。どんな国で、どのようにして生産されているのか知らないことも多い▼京都大学名誉教授の西山孝氏が執筆した「元素のふるさと図鑑」(化学同人刊)は、鉱山からメタルを取り出し素材として役立つ道のりを分かりやすく紹介している。鉄や銅といったベースメタルに加えて先端産業に欠かせないレアメタルにも多くのページを割いている▼個人的に興味を持ったのはメタルごとの「耐用年数」。埋蔵量を一年間の生産量で割って得られる値で、枯渇の指標となる。長い地球の歴史のなかで枯渇したメタルはなく、あの金でさえも耐用年数は17年と25年前とほぼ変わらないという▼新たな鉱床の発見やメタルを取り出す技術の進歩が貢献したが、資源が有限なことは変わらない。これからはリサイクルなど持続可能な技術が求められている。(22・6・17)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

精留塔の最新記事もっと見る