ヨハネス・グーテンベルクは、活版印刷技術の発明者とされる。西暦1445年頃のこの発明により、本の大量生産が始まった。安価に本が生産できるようになった欧州では、論理的、合理的な考えが広く普及し、ルネッサンス、宗教改革、科学革命を引き起こした。西洋が世界をリードするようになったのはこのためである。以後、500年以上にわたり、メディアの中心は活字であった▼「電子メディアの登場により、地球規模のコミュニケーションが成立し世界はあたかもひとつの小さな『村』(地球村、グローバルビレッジ)のようになる」。文明批評家のマーシャル・マクルーハンが、彼の著書「グーテンベルクの銀河系」でそう表明したのは1962年のことだった。ここで言う電子メディアとはラジオやテレビのことだ。むしろインターネット時代における世の中のあり方を予言したとして、今世紀に入って評価が高まった▼フラットかつ非独占的な情報通信技術であるインターネットの普及で、人類はより民主的な文化を手に入れるはずだった。ところが最近、村では独善的な役者たちが活躍しており、内輪もめが目立ってきた。技術が普及する段階で起こる揺らぎであろうか▼技術がどう進歩しようとも、英知を伝授する意味での活字の役割は変わらない。そう信じている。(19・6・11)

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