米モデルナは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの生産拠点を日本に立ち上げる検討に入った。mRNAの原薬を国内生産できる体制を構築し、製剤化などは国内の医薬品製造支援機関(CMO)などに委託することを考えている。新型コロナウイルスワクチンに続き、季節性インフルエンザやRSウイルス感染症に対するワクチンなどを日本で開発する予定。生産拠点を国内に置くことで、今後の新規ワクチンや新興感染症ワクチンの早期実用化と安定供給を可能にする。

 このほど就任したモデルナ日本法人の鈴木蘭美新社長が、化学工業日報の取材で明らかにした。鈴木社長は「日本でmRNAワクチンを国内生産できることは非常に重要」と話し、mRNA原薬の生産拠点を国内に立ち上げる意向を示した。mRNA原薬をGMPレベルで量産できる国内企業がまだ存在しないため、自社生産する工場が必要とみている。具体的な場所や時期は未定だが、「政府との話し合い次第でもあり、私の一存では決められないが、ナショナルセキュリティーの観点からも、個人の思いとしてもぜひ実現したい」考え。

 同社のコロナワクチンは現在、海外のCMOなどが受託製造しており、日本向けにはスイス・ロンザ、スペイン・ロビが製造している。一方で、自社で原薬を現地生産する体制も強化し、豪州やカナダでは複数年間の購入契約と合わせてモデルナが現地に自社工場を立ち上げる契約を政府と結んだ。日本でも同様のスキームで生産体制の立ち上げを目指す。原薬を製剤化し、充填、包装するプロセスはCMOなどへの委託を検討する。

 国内生産するのは、コロナワクチン以外の新規ワクチンも対象。米本社では37件の新規mRNAワクチン・医薬品の研究開発が進行中で、原則としてすべてのグローバル開発に日本も参加して同時開発する方針。コロナワクチンに続く開発候補となるのが季節性インフル、RSウイルスなどのワクチン。両ワクチンは来年にグローバルで第3相臨床試験(P3)を始める予定で、タイミングが間に合えば日本も治験に参加する。まずはそれぞれ単味ワクチンとして開発したうえで、コロナ・インフル・RSの混合ワクチン化を目指す。

 モデルナは今年4月に日本法人を設立。11月に鈴木氏が初代社長に就任し、事業活動を始めた。現在の社員数は10人未満だが、臨床開発や薬事部門を中心に増員し、来年末には数十人程度の組織にする予定。(赤羽環希)

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