中国の工業情報化部は17日、20日時点で大部分が都市封鎖下にある上海で、一定条件の下、工場稼働の継続・再開を認める重要企業リスト(ホワイトリスト)を発表した。上海化学工業園区(SCIP)に工場を置く化学企業に加え、半導体や自動車などの製造業が含まれる。上海市も16日、従業員が外部との接触を避けるクローズドループ勤務の実施など、生産継続のための感染防止指針を発表。本格的な産業活動再開にじわり動き出した。

 <計666社をリストに>

 工業情報化部はこれまでに作業グループを上海市に派遣。市の関連部門と協力して都市封鎖下におけるサプライチェーン維持の仕組みづくりについて検討を重ね、計666企業からなるホワイトリストを作成した。化学や半導体、自動車と同部品、エンジニアリング、鉄鋼、バイオ医薬などの製造業が対象で、業務・生産再開に必要な原料の確保など当局の支援を優先的に受けることができる。

 SCIP内の化学企業や市内の半導体関連企業はこれまでも稼働率を調整しつつ生産活動を継続してきたが、ホワイトリストには中国石化(SINOPEC)の傘下企業や三井化学と中国石化の合弁会社、三菱ケミカル、三菱ガス化学、独BASFの現地法人といったSCIP入居企業約30社、外資を含む半導体関連企業約70社などが列挙されている。

 製造各社は原料調達や物流に困難を抱えており、SCIP内のある企業によると、設備によっては安全稼働を確保できる下限の5割程度まで稼働率を下げざるを得ないケースもある。

 こうしたなか工業情報化部は、上海市による各産業チェーン重要企業へのヒアリングに基づき、長江デルタ地域(江蘇省、浙江省、安徽省、上海市)内で必要な産業資材を確保し、上海に供給する仕組みづくりを進めている。省・市間の物流を円滑化する制度も導入する。

 <再開には一定期間>

 一方、上海市は16日、生産活動継続・再開の条件となる感染予防ガイドラインを発表した。例えば企業はクローズドループ勤務計画を作成し、市当局および工場立地区の許可を取得しなければならない。また生産現場など工場内でリスクが高いとされる場所では、N95もしくはKN95マスク着用が義務づけられる。

 さらに工場内のエリアは物理的に隔離され、すべての社員が指定された場所以外への移動を避けるなど、他部門や別シフト勤務の社員との接触を最小限に抑制しなければならない。

 このほか社員には1日二度の検査(PCRと抗原検査各1回)が、外部からの訪問者には48時間以内のPCR検査陰性証明、社用車運転手にも同様のPCR証明もしくは24時間内の抗原検査陰性証明がそれぞれ求められる。

 工業情報化部と上海市はいずれも“一企一策”つまり個々の企業の実情に合わせた防疫策や生産活動の継続計画の立案を求め、これを支援する方針。市の指針は企業に対し、14日分以上のマスク、消毒用アルコールといった感染予防用品の備蓄を要請しており、封鎖解除は5月以降となる見通し。また封鎖開始以降、自動車や同部品で稼働を停止している市内工場は少なくないが、指針で示された条件を満たすにも一定の時間を要するとみられる。(中村幸岳)

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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