中国政府が、これまで北京、上海など都市部を主に試行・パイロットとして行ってきた、ごみの分別回収事業。ここにきて上海市が本格的に事業を確立しようと動き始めている。対外経済開放政策を境に、過去30年以上にわたる拡大路線で世界に多大な影響力を持つにいたった中国。自動車をはじめ樹脂、塗料などの生産量で世界トップに立つまでに成長した。支付宝(アリペイ)など電子マネーも世界最速で普及、自転車シェアリングなど世界初のビジネスも生み出している。
 しかし同時に、増大する食料ニーズにともなう廃棄物や、産業・工業からの廃棄物、都市部を中心とした生活系ごみなどの発生量も天文学的に増加した。いよいよ中国も、ごみ処理や各種廃棄物に対する本格的な取り組みへ行政が舵を切ろうとしている。なかでも、ごみ処理施設や最終処分場などの設置で先頭を走ってきたのが上海市。先ごろ2020年末までに市内全域のビルや事業所、工場、そして居住区から発生する生活ごみに対し、分別廃棄を徹底させる方針を発表した。
 併せてバスや地下鉄など公共交通の画像メディアで、ごみ分別など意識を高めるための市民向けのビデオ放映も開始した。オフィスや事業所などのごみ集積場には「分別廃棄」を明示するシールが貼られ始めている。同時に行政側も、日本をはじめ各国のごみ処理事業を参考にするべく動きを加速しており、東京都などに上海市をはじめ中国各地から、視察の打診が増加中という。
 今後、工場や事業所、産業系廃棄物の分類や処理は比較的容易に進むと推察するが、一般市民などに住居系・生活系ごみの分類や分別回収を、いかにして根付かせるかがポイントとなろう。その意味で上海市の一部地域で行われ始めた事業所ごみ廃棄時の「有害」「無害」という単純な区分けシールの効果は疑問だ。欧州や日本でも行われている紙、金属、樹脂・プラスチックなど素材別回収の枠組みを導入した方がよいと思う。一般市民には何か無害で何が有害など不明な場合も多く、廃棄時に必ず戸惑うだろう。また単純に「樹脂は有害」などという誤解を招く懸念もある。
 ごみ収集後に、人海戦術で分別するのは作業環境や経済性から言っても好ましくなく、ごみが出される最初の段階で素材や材料別に分ける方が行政のコスト負担も大幅に減少する。時間は必要だが、幼少期から、例えば小・中学生段階で環境・リサイクル教育を充実させるといった取り組みも、行政側は考えるべきではないか。

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