中国政府が昨年に続き、大気汚染対策を本格化させている。生態環境部は京津冀(北京市・天津市・河北省)や長江デルタなどを主な対象とし、来年4月末までの10カ月間にわたる大規模な環境査察を開始した。日系企業も社内に環境保護担当を設置するなど対応を急ぐが、個社で対処し切れない場合も多い。工場の入居地域一体で情報交換や政府対応を行う必要性が再認識され始めている。
 生態環境部は6月11日に「青空を守る戦い」と称される大気汚染改善計画を開始した。昨年末ひと区切りつけた「大気汚染防止行動計画」に続くもので、京津冀および周辺地区や汾河と渭河の流域にある汾渭平原、上海市や江蘇省などの長江デルタに、延べ1万8000人の査察官を動員する。
 こうした重点地域の大気環境は改善傾向にあるものの、鉄鋼や石炭、化学工場などの集積地でもあるだけに汚染度合いは、いぜん他地区に比べ高い。汾渭平原にいたっては汚染が悪化している状況で、査察によって環境汚染企業の整理を進めるとともに、今冬の汚染排出の削減や生産ピークの分散といった措置を講じていく。
 「世界で最も厳しい」とまで言われるようになった中国の環境規制を受け、日系企業も対応に腐心している。とりわけ各社が苦労しているのが、地方政府の役人ごとに法規制の解釈や運用方法が異なることだ。「先月査察に来た担当者と、きょう来た別の査察官で言うことが180度異なる」-。日系企業の代表者が、ため息混じりにこう漏らすことが珍しくない。
 地域によっても異なる規制に対応するため、日本の化学大手では、地域統括会社内に環境安全の専門部署や専任ポストを設ける動きが相次いでいる。各社が中国全土でビジネスを広げるなか、日本からの担当者の出張ベースの対応だけでは追いつかないことが背景にある。
 ただ専任ポストを設置できるのは体力のある一部大手に限られる。今春以降、地元政府から各工場ごとの専任担当者の配置を求められたケースもあるが、対応できるのはひと握りの企業だろう。
 日系企業は旧来から、入居する開発区ごとに日本人連絡会などを設けて情報共有を重ねてきたが、昨今は従来以上に地域でのまとまった情報収集や政府への陳情が必要となっている。近隣に日系企業が少ない場合は中国企業と協力する手もある。対処のための正攻法を見つけにくいのが中国の環境規制。個社の社内体制整備はもちろん、外部との協力など総合的な取り組みが急務となってきた。

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