わが国の製造業にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ、多くの企業がIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータ解析などの活用に力を入れている。ただ現状では大企業の取り組みが中心で、中小企業での導入事例は少ない。
 2018年版の中小企業白書によると、大企業の労働生産性(従業員1人当たりの付加価値額)は、リーマンショック後に大きく落ち込んでから回復傾向にあるのに対し、中小企業は一貫して横ばいで、2009年以降、その格差が広がっているという。このままでは多くの従業員を抱えて資金力のある大企業ばかりがIoT・AI関連に投資して大きな成果を挙げ、競争力を増していくことになる。資金力が乏しく、専門の知識や人材を持たない中小企業は置き去りにされかねない。
 しかしIoTの活用などDXに向けた取り組みは、中小企業やベンチャー企業でも始めやすいのが特徴だ。利用した分だけ支払うサブスクリプションモデルのIoTサービスも数多く提供されており、初期投資を抑えつつ、IoTを活用した新サービス・新規ビジネスを立ち上げたり、自社の生産性向上に取り組むことができる。
 例えば、スタートアップ企業のアムニモ(東京都武蔵野市)は、主に中小企業への産業向けIoT(IIoT)の導入から運用、その先の活用までの面倒な作業を引き受けるサブスクリプションサービスの開発を進めている。サービスに加入するとセンサーが計測したデータをクラウドに送るためのハードウェア一式が送られ、スマートフォンでQRコードを読み取ると自動的に設定が完了する。月に最低3万円(予定)と低額。その日からセキュリティーが確保されたうえで24時間監視付きのIIoTを導入できる。利用者である中小企業は、自社の生産性向上や新サービスの開発に専念でき、課金・徴収の仕組みも提供される
 社員わずか4人のベンチャー企業、ハンテック(東京都目黒区)は、このサービスを使って狩猟者向けIoTサービスを開発した。山間部に設置したIoTセンサー付きの罠を監視する仕組みにより、作動した罠だけを確認することで、山全体に仕掛けた罠を全て見回る必要がなくなるともに、飲食店向けに、より新鮮な野生鳥獣の肉を提供できるようになる。
 このほかにも多くのサービスが開発・提供されている。全体の99・7%を占める中小企業こそ、これらのサービスを活用して新たな価値を創造し、成長の糧としてほしい。

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