米中間選挙で4年ぶりに「ねじれ議会」が生じる事態となった。上院では政権与党の共和党が過半数を維持したが、下院では野党の民主党が逆転して過半数を獲得。トランプ政権に対する支持と嫌悪が入り交じる結果となった。下院を掌握した民主党は今後、ロシア疑惑や脱税疑惑などを追及し、大統領の弾劾要求や諸政策の阻止に動くはずだ。トランプ氏は対応に時間とエネルギーをとられ、より強硬な「トランプ流」を発揮しかねない。切り札である大統領令を再び乱発することも想定され、混乱や分断が加速する恐れがある。いずれにしろ、好調な米経済にとって好ましくない環境が予想される。世界のGDPの4分の1を占める米経済にブレーキがかかれば、世界経済は方向性を失いかねない。
 昨年1月の大統領就任以来、世界は型破りなトランプ流を目の当たりにしてきた。しかし半世紀ぶりの失業率の低さにみられるように、足元の米経済は絶好調。トランプ流が結果的にもたらした好景気のなか、中間選挙は両院とも共和党が勝利してもおかしくない状況だった。しかし米国民は景気の良さだけにとらわれることなく、冷静にトランプ政権の約2年間に審判を下した。中間選挙としては異例の盛り上がりをみせたのも、国民の政治への関心の高まりを反映したものだ。
 トランプ氏は米国第一主義を掲げ、鉄鋼や自動車など米国が強かった産業を復興させることで雇用を増やし、強い米国を取り戻すと言い続けている。しかし経済は生き物であり、環境の変化に対して常に適応能力を高めなければ生き残ることは難しい。旧来然とした産業にしがみつけるのは、せいぜい5~10年くらいではないか。今の時代、もっと短いかもしれない。
 100年以上前、ウィルソン大統領は「富は既存の支配階級から生まれるのではなく、未知の人たちの想像力と発明と野心によって創られる」と述べたという。米国発のこれまでのイノベーションの多くが移民によってもたらされたことも見逃せない事実だ。中国との貿易紛争に明け暮れるよりも、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、自動運転など世界のイノベーションをリードする座を中国に奪われないよう、長期的な視点の下、破壊と創造を後押しするべきではないか。
 日本の化学企業も、この中間決算では、おおむね前年並みの好調さを引き継いでいる。しかし足元の好景気に踊らされることなく、中長期をにらんだ次世代の柱を育成するべく、破壊と創造へ勇気を持って踏み出して欲しい。

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