すでに報道されているように中国の中央電視台(CCTV)が先ごろ、毎年恒例の「3・15晩会」を中国全土で放映した。3月15日の世界消費者デーに合わせて、国内における企業の不正や偽装行為、消費者軽視の姿勢を記者が潜入取材などで突き止め、実名で告発する番組だ。放送の前後には在中国、とくにコンシューマー製品を展開する日系企業は警戒態勢を取る。現地では万一の実名報道の際の対処方法を解説するセミナーも行われているほどで、企業活動に大きな影響力がある。
 これまで欧米系・日系企業が実名報道されたこともあり、今年も放送前は流言飛語が飛び交った。ただ今回、番組で取り上げられた外国企業は、放送冒頭の独自動車大手のエンジントラブル問題のみ。残りは、中国企業による偽装品飲料や健康食品詐欺、自転車シェアリング企業による保証金持ち逃げ事件が中心となっていた。
 胸を撫で下ろしている日系コンシューマー製品大手も多いと推察するが、今年は微信(ウェイシン)などSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で大きな話題になることもなく、ネット炎上もなかった。同番組は、これまで消費者の不買運動発生や、偽装製品を売る店舗へ大勢の市民が押し掛けるといった数々の騒動を巻き起こしていた。それに対し今回は、企業への攻撃という牙が抜かれた感も否めない。
 今年の放送は全人代(全国人民代表大会)の最中でもあり、無用な騒乱を起こしたくない北京中央政府の意向が働いたとも言われる。また昨年の3・15晩会で、日系大手の生活用品企業が産地隠蔽の嫌疑で槍玉に上がったが、その内容がCCTVの誤認報道であり、番組を見た視聴者が相次いで番組に疑問を投げかけ、ネットが炎上状態になった。さらに中国の製品輸出入を司る行政機関が、反論のコメントを出すという異例の事態にいたった。
 こうしたことも重なり、今年の3・15晩会は「食品の誤った情報を正し、詐欺店舗にも気をつけましょう」といった生活者への注意喚起が中心のソフトな内容に変貌。番組自身が路線転換した風にも感じられる。
 「消費者保護」という番組の理念自体は素晴らしい。ただ、いたずらに無用な騒動を引き起こすなら、大国を目指す中国の品位を落とすことにもなるのではないか。企業攻撃を目的とするのではなく、むしろ生活に役立つ、ためになる情報番組へと変革をした方が良い。化学品や食品の安全性、健康法などに対する根拠のない、あるいは歪曲された情報は困りものだが―。

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