境内全体が世界文化遺産に登録されている上賀茂神社は、その起源が2600年前以上とされ、京都で最も古い杜といわれる。一年を通してさまざまな祭典行事が行われるが、5月5日の賀茂競馬(くらべうま)を見てきた▼現地で買ったパンフレットによると、宮中武徳殿で5月5日の節会に催されていたのが初まりで、天下泰平や五穀豊穣を祈願する。多数の馬が走る西洋の競馬と異なり、左右に分かれた2頭による勝負が何番か行われる。平安時代の1093年に上賀茂神社に移され、かつては足利義満や織田信長も馬を奉納し観覧した▼騎手は乗尻(のりじり)と呼ばれ、舞楽の衣装をまとう。馬場に設けられた柵「埒(らち)」は現在の競馬場にもあるが、ここが発祥らしい。ことわざにある「埒があかない」の語源でもある▼晴天に恵まれ午後2時から行われた競馬は多くの観客で賑わった。乗尻の中には中学生や高校生もいたが、うまく乗りこなしていた。彼らは本番前の数カ月間、牛・豚といった四つ足の動物の肉を食べないなどストイックな生活を送る▼覚悟はしていたが、帰りのバスはラッシュアワー並みに混んだ。観光客だけでなく地元のお年寄りも続々乗ってきて申し訳ない気がしてくる。最近見かけるようになった「オーバーツーリズム」の言葉が頭をよぎった。(19・5・10)

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