産業安全の第三者評価機関である「保安力向上センター」が母体である安全工学会から独立し、今月からNPO法人として新たな歩みを始めた。センターの活動の大きな柱である「保安力評価システム」は当初、安全の実力を自ら評価し課題を解決するためのツールとして化学企業で使われ始めたが、現在は鉄鋼やプラスチック加工など製造業だけでなく、物流・倉庫業でも利用されている。製薬業界も興味を示しており、活躍の場はさらに広がりそうだ。
 安全・安心の確保には、法令順守だけでなく企業の自主的な取り組みが不可欠なことは言うまでもない。企業の安全活動としては、プラントの安全設計や保全、リスクアセスメントなど安全管理の基盤だけでなく「安全を守る」という文化を高めていくことが重要になる。保安力評価システムは、現場が自律的に取り組むことができる安全評価手法として安全工学会により開発された。
 保安力評価では、安全基盤と安全文化について5段階に分類されたレベルのどれに該当するかを判断する。現バージョンでは安全基盤93項目、安全文化60項目が設定されているが、必ずしも全てで5点満点を目指せばよいというわけではない。取扱品目やプロセス、管理体制など事業所の特徴に応じ、それぞれ目指すレベルを決めればよい。まず自らの弱み、改善点を知ることが重要。また満点でなくでも基盤・文化の総合力で安全は確保できる。これが“保安力”のコンセプトだ。
 保安力向上センターは2013年4月に安全工学会の一委員会として発足。設立・運営を支援する化学18社で保安力の自主評価が始まった。センターでは客観性を持たせるため第三者評価を実施しているが、評価結果を統計処理すれば、各種の安全活動と安全成績の関連性が明確にできる。また各社・各事業所の良好事例も収集し、このほど会員企業向けに公開した。こうした情報を共有できれば今後、中小企業が大企業の知見や経験を活用することも可能だ。
 ICT(情報通信技術)の発展にともない設備のスマート化が進んでおり、高度な保安技術を導入した事業所に対し認められる「スーパー認定事業所」制度も始まった。設備のAI(人工知能)化も進むだろうが、センターの伊藤東会長は「現場の力が大前提」と指摘する。現場の優れたノウハウをAIにも学ばせることによって、AIによる技術伝承が行える可能性もある。企業ノウハウのため取り扱いは十分注意しなければならないが、産業界の宝として上手く活用を進めてほしい。

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