なんどかこの欄で書いたが、宮沢賢治は化学ととても縁が深い。小さい頃は「石っこ賢さん」と呼ばれるほどに石(鉱物)に熱中したというし、作品の中には炎色反応など化学の知識や用語がたくさん登場する。化学反応の様子は作者のイメージを豊かにする働きがあるようだ▼賢治と化学・鉱物に関する書籍も少なくない。『宮沢賢治と化学』(裳華房)、近刊の『宮沢賢治の元素図鑑』(化学同人)などはたいへん面白い。とくに後者は賢治作品に登場するすべての元素をビジュアルに解説していて、読んでいると時間を忘れるほどだ▼賢治とは関係ないが、世の中には化学をビジュアルに表現する様々な意匠に満ちている。たとえば「結晶美術館」というホームページ。元素周期表や炎色反応、色かたちとりどりの結晶の写真が楽しめる。もちろんこれだけではなく、ウェブのグローバルな世界にはたくさんの「お宝」が眠っているのだろう▼東京都写真美術館で異色の写真家の回顧展「内藤正敏 異界出現」が開かれている。様々なシリーズがある中で「コアセルべーション」と名付けたシリーズが魅力的だ。高分子物質と有機溶剤などがガラス板上で起こす化学反応を接写した。作者は大学で化学を専攻したという。生命の起源を空想させるような不可思議な写真だ。(18・7・4)

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