イソップ寓話に「北風と太陽」という有名な話がある。日々寒暖を繰り返すこの時期にふと思い出す。気候だけが理由ではない。新年度を控えたこの時期が人事異動の季節でもあるからだ▼あるとき、北風と太陽は力比べをすることになる。旅人から上着を脱がせることができるかどうかが勝負だ。まず北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする。しかし、旅人は寒くて上着をしっかり押さえてしまい、脱がすことができない。次に太陽が燦々と照りつける。旅人は暑さに耐えきれなくなり、ついに自分から上着を脱いで太陽の勝ちとなる▼この話、上司が部下に接する場合の教訓として引用されることが多い。厳しく接するだけでは部下を動かすことはできず、むしろ頑なになってしまう。暖かく優しい態度で接することにより、はじめて部下は自分から動いてくれる、というものだ▼性格にもよるが、人に厳しく接するというのはなかなか難しい。したがってこの寓話の教訓は都合良く胸に響き、無意識に支持したくなる。しかし、本当にそうだろうかと不安にもなる。振り返れば、厳しい上司のおかげで、殻を破って挑戦する大切さに気付くこともあったのでは、と▼毎年繰り返される人事異動。ときに厳しすぎると感じるその命令も、いつか人生の糧になると信じたい。(19・2・19)

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