半導体業界では圧倒的なシェアを握るメーカーが存在する。EUV(極紫外線)露光装置で100%のシェアを握る蘭ASMLが最たる例だろう。装置がなければ微細化のカギを握るEUVプロセスを導入できないとあって、年産50台ほどのEUV露光装置は奪い合いの状況だ。材料側に目を移すと、層間絶縁材料でほぼ市場を独占する味の素ファインテクノの存在感が際立つ。両社に共通するのはサプライヤーとして突出し、価格競争と無縁であることだ。

 1台200億円もするEUV露光装置を数多く導入しようと台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子が躍起だ。EUVプロセスに乗り遅れまいとSKハイニックス、インテルなども続く。ASMLは、一段性能を高めた次世代EUV露光装置を開発し、価格を約2倍の390億円に設定した。値段など二の次とばかりに、こちらも争奪戦が始まっている。

 ASMLは、EUVに次ぐ先端プロセスのArF(フッ化アルゴン)液浸露光装置でも9割以上のシェアを握り、2021年度の営業利益率は36・3%を記録した。今後も先端領域を独占し、40%弱程度を確保する見通し。

 22年度の営業利益率を50・1%と見込むのが味の素ファインテクノだ。手がける層間絶縁材料「ABF」は、先端ロジックのパッケージ基板のビルドアップ層に使われる。従来は液状の絶縁材料が使われていたが、世界で初めてフィルム状を開発し、確固たる地位を築いてきた。

 利益率の高さはアセットライトの生産体制にもある。味の素はワニス生産のみを手がけ、塗工からロール化・出荷までを外部に委託。ABFの高性能化で単価も上昇傾向にあるという。

 SUMCO、信越化学工業の2社が市場を牽引する先端ロジック向けのシリコンウエハーも、サプライヤーが優位な立場にあるといえる。半導体不足によってユーザーの調達リスクが浮かび上がり、両社はユーザーとの間で長期契約を結び、さらに値上げも通した。

 一般的には、材料を選ぶ側のユーザーが優位な立場となり、材料メーカーは価格競争や値下げ圧力にさらされる。ただサプライヤーが1~2社に限られるとサプライヤーの存在感が一気に高まり、サプライチェーン上の必要不可欠なパートナーとなる。

 転換期を迎えた半導体業界は、トランジスタがFinFETからGAAに移行し、後工程では次世代パッケージの技術開発が進む。求められる革新材料を生み出したメーカーが唯一無二のサプライヤー候補となる。

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