マンハッタンにある本館が有名な観光地でもあるニューヨーク公共図書館(NYPL)。開設は1895年で、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの寄付によってその礎を築いた。ドキュメンタリーの巨匠といわれるフレデリック・ワイズマンが監督した映画が東京・神保町の岩波ホールで上映されている▼3時間を超える大作だが、ナレーションはなく音楽もほとんど流れない。それでも退屈せず観ることができたのは、NYPLが実に多彩な顔を持っているためでもある▼ユニークなのは88もある分館の活動。地域住民が参加する読書会や親子のための読み聞かせ教室は想像の範囲内だが、就職支援プログラム、障害者向け住宅手配サービス、子供たちがロボットを作ったりするイノベーション・ラボなど、われわれが考える図書館の仕事の枠を越えている▼スタッフ会議の模様も興味深い。NYPLの財政は市の出資と民間の寄付で賄われる。市の賛同を得、寄付を増やすにはどんな活動が必要か。「電子書籍」に対するニーズに応えていく一方、図書館として「残すべき本」もたくさんある▼デジタル時代だからこそ、多様な役割が求められる。それは地域密着のアナログ的な活動でもあるし、何より仕事や生活に必要な情報を提供できる拠点であり続けることだろう。(19・6・28)

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