2019年がスタートした。08年のリーマンショックから立ち直った世界経済は、グローバルな協調体制のなか約10年にわたり堅調な成長を続け、構造改善を経た化学産業の業績を下支えした。とくに、ここ数年は為替レートの超円高の修正、原油価格の沈静化、中国の環境規制強化などが追い風となり、化学企業の収益を押し上げた。しかし昨年終盤から、こうした潮目は大きく変化しており、不透明感が強まっている。
 経済規模で世界1位・2位を占める米国と中国は対決姿勢を強めており、関税を巡り期限を切った攻防を繰り広げている。3月に英国が離脱する欧州連合(EU)は、その一方で2月に日本と経済連携協定(EPA)を締結する。世界は音を立てて過去の枠組みから抜け出し、新たな成り立ちを求めて変貌しようとしている。平成の30年間をくぐり抜けてきた日本もまた、5月に元号が変わり、新たな時代の幕が開ける。
 産業界においては、情報通信技術(ICT)や計算機科学といった技術の急激な進歩を背景に、これまでと違う新たな時代に突入しようとしている。研究開発、生産、マーケティング、物流といった各段階のプロセスや技術が刷新され、エネルギー供給の仕組みも変化し、シェアリングエコノミーなど新たな生活スタイルが定着しようとしている。こうした非連続、大掛かり、かつ急激な変化に対応して存続・成長するために、企業もまた、これまでにないスピードで変化に対応することが求められている。
 一方で産業界は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に代表される社会の抱える課題への貢献や、環境・社会・企業統治(ESG)への適切な対応が求められている。企業にとって地域・社会への貢献は、どちらかといえばコスト負担をともなう奉仕ととらえられてきた。しかし今日では、SDGsを達成する製品やサービスそのものがリターンを生み、SDGへの対応こそが企業存続の源泉であると考えられるようになった。
 こうした観点に立った時、企業は短期間での収益変動のみに一喜一憂するのではなく、社会課題の解決に役立つ製品やサービスを生み出すための長期的な視点が求められるといえよう。地球規模の課題に立ち向かうには、国家や業界を越えた広範な連携・協力も不可欠となる。2019年は、こうした新たな時代を生き抜くため、世界の変化を敏感にとらえ、迅速に行動すべき年といえる。そして社会課題の解決のため、化学が大きな力を発揮し得る点を再確認する年となるよう期待する。

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