「ふるさとは遠きにありて思ふもの…」とは室生犀星の有名な詩。だが、最近は状況が違う。交通機関が発達し、九州や北海道も思い切れば日帰り可能な圏内。インターネットの普及でご当地情報も瞬時に調べられる。「…そして悲しくうたふもの」には、なかなか続かなくなった▼故郷や応援したい自治体の経済活性化などに役立てる目的で2008年に始まったふるさと納税は、返礼品競争に発展した。総務省の要請に応えて返礼品の価格を寄付額の3割以下に抑える自治体は増えているが、厳しい財政を補うため過度な返礼品を止めない自治体の事情も察しはする▼6月からふるさと納税の新制度が始まる。返礼品について調達費が寄付額の3割以下の地場産品に限り、総務省が基準に適合した自治体を指定する。これに従い、基準を超える返礼品を出していた大阪府泉佐野市など4市町の参加を認めない方針という。除外された自治体に寄付しても税金の優遇が受けられなくなるのだ▼自治体の創意工夫を妨げるなど反発の声もある。東京都は新制度への参加を辞退したが、大都市圏を除く地方自治体の台所事情は概ね厳しい。ルール違反は良くないが、ふるさと納税制度の設計段階で問題があったとの指摘も多い。遠くのふるさとを身近に感じ、支援したい気持ちを大事にして欲しい。(19・5・16)

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