武田薬品工業は5日、臨時株主総会を開き、アイルランドの製薬大手シャイアー買収の承認を得た。すでに各国規制当局の承認を取り付けており、数週間以内に買収は完了する。日本企業による海外買収で過去最高額となる460億ポンド(約6・6兆円)。今後、いかに統合を加速し、世界で勝負できる競争力に結実するかが焦点だ。そして巨体を支えられるだけの大型新薬の創出が至上命題になる。
 今回買収により武田薬品の売上高は約3・5兆円に倍増し、世界製薬ランキング8位に踊り出る。薬問屋として1781年に創業した老舗の武田薬品は00年以降、化学品や農薬など医薬外の事業を売却し、医療用医薬品で世界で戦うための構造改革を進めてきた。買収後は日本だけでなく米国にも上場し、いよいよメガファーマ「タケダ」として世界に本格挑戦する。
 世界トップのスイス・ロシュや米ファイザーの売上高は6兆円前後と彼我の差は大きいが、新薬ビジネスは巨額の研究開発投資をいかに継続できるかがカギ。買収後の武田薬品の研究開発費は年4000億円規模と現状比3割近く増える。研究開発体制の再編を通じて創薬研究の重点は「消化器疾患」「がん」「神経精神疾患」に絞った。ここにシャイアーが得意とし、新薬ビジネスの成長株と目される「希少疾患」が加わる。
 武田薬品は1990年代、糖尿病薬や高血圧薬、潰瘍薬、前立腺がん薬を相次ぎ自社研究から生み出し、大型製品へと育てた。これらを武器に海外基盤を築き、世界で存在感を高めた。ただ00年以降は自社新薬に恵まない。主力薬が大きく育ったが故に特許切れの反動は大きく、海外企業買収に活路を見出すしか成長の道はなかった。
 シャイアー買収も、いまだ大型新薬を生み出せない現状を打破する手段だ。クリストフ・ウェバー社長は本紙取材で「現状維持は楽。でも10年後、それが大きな間違いだったと気付いても遅い。だから、もっとプロアクティブに進んでいきたい」と買収決断の思いを語った。短・中期の成長戦略だけでなく、足元の先端創薬研究の世界競争にも勝機を見ているようだ。
 買収によって倍に膨らむ売上高を拡大し、利益の高成長を持続するには、現在より売り上げ規模の大きい新薬を揃えねばならない。創薬は科学技術が結集する世界で最も競争の激しい産業。これまでの欧米大手の再編は決して成功と言えず、同じ轍を踏みたくないが「タケダ」が踏み出す挑戦の難易度は高い。しかし成功すればリターンは大きく、世界での存在感を増すことになるだろう。

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