デジタル技術が進歩する一方、アナログ技術との融合によって新たな地平が拓かれる領域もある。名古屋大学の森島邦博特任助教らが取り組んでいる研究が宇宙線イメージング。宇宙から降ってくる素粒子の一種、ミューオンを利用し大型構造物の内部を非破壊で可視化する技術だ▼レントゲン撮影に用いられるX線の計測深度は1メートル程度。これに対しミューオンは直進性に優れるため1キロメートルにも及ぶ。このミューオンを写すのが原子核乾板と呼ぶアナログ写真フィルム▼透明なプラスチックフィルムを検出部(乳剤層)で挟み込んだ構造だが、マイクロメートルの精度でミューオンの軌跡を立体的に記録する。そのデータを顕微鏡で拡大して読み取り、コンピューターで処理する。国際共同研究でエジプトのクフ王のピラミッドを調査、未知の空間を発見する成果が得られている▼過去にはカメラのデジタル化のあおりを受けフィルムメーカーが原子核乾板用乳剤の生産を止め研究の継続が危うくなったこともある。幸い退職した技術者が大学で原子核乾板を作らないかと声をかけ、今でも自前で生産を続けている▼遺跡の調査だけでなく、福島第一原子力発電所の炉心溶融の確認にも力を発揮した。宇宙線はあらゆる場所に降っている。老朽化したインフラ点検など使い道は多そうだ。(19・7・26)

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