国内化学大手の2018年3月期決算は総じて増収増益となり、過去最高の利益・売上高などに沸いた。有価証券報告書の各社コメントを見ると、石化製品やファインケミカルなどの世界的な需要の伸びに加え、中国の環境規制による市況構造の変化、および同国での大幅な販売増という表現が目立った。日本の化学業界が空前の好況となった要因の一つに、中国の市場環境があるといえるだろう。
 何よりも中国で生産されていた多様な有機・無機化学品、化学原料が軒並み生産ストップとなったことが大きい。当局は昨年初頭から、安全生産や環境保全などの規制に違反を続ける企業の工場・事業所を全土で強制的に閉鎖。総経理や工場長らが容赦なく逮捕・拘束された。
 昨年末の中国政府当局の発表によれば、30万人を動員した中国全土の一斉検査・立ち入り調査で、3万社以上の工場・事業所が閉鎖・生産停止に追い込まれた。本年も同様の規模で、鉱山やメッキ・金属加工・化学関連工場の安全・環境違反チェックが行われる。
 中国の現地企業の生産停止は日本国内の化学品生産にも波及し、結果的に稼働率を大きく押し上げた。また中国の原材料サプライチェーンが必然的にダウンする結果となり、中国に拠点を置く日系化学各社は昨年、原料が手に入らなくなった企業の代替品の確保、複数ソースの構築に追われた。
 以降、日系の化学企業・関連各社の間では「安定供給」が重要なキーワードとなった。「安定供給こそが今の中国におけるビジネスと事業の競争力」(化学大手の中国総代表)とまで言い切る。中国の化学品ビジネスで強みを持つ専門商社の総経理も「中国の大手家電や自動車、建機企業など、樹脂や多様な化学品を大量に使う需要家から安定供給が強く求められている」と明かす。
 化学品を使う中国ローカルの家電や自動車などメーカーは、コストや人のつながりなど、さまざまな関係から中国品をメインとしてきた。ただ当局の規制強化による工場閉鎖で、これらメーカーの生産計画にも大きな狂いが生じている。
 中国では「安定供給」を確実に実行できる化学品・素材企業に事業拡大の好機が到来している。国籍は問わない。そこで日本企業の出番。安定供給はお家芸だ。これまで中国でのビジネス競争では、コストや取引条件が決して対等ではないことから苦汁を舐めるケースも多いと聞く。今こそ日系化学企業が、その環境から脱し、中国で成長市場に本格的に打って出るチャンスではないか。

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