反魂丹(はんごんたん)―。300年を超える歴史がある富山の製薬業のルーツとも言える胃腸薬だ。江戸城で腹痛に襲われた三春藩(福島県)の藩主に富山藩主の前田正甫が反魂丹を与えたところ、たちまち回復。それが諸藩に知られることになり、富山の薬売りにつながっていった▼富山藩は配置員の保護・育成や薬の品質管理を行う「反魂丹役所」を設けるなど藩を挙げて売薬業の発展に力を注いだ。しかし明治時代に入ると医薬業界を国家で統制しようとする動きが出て、富山の薬売りは窮地に追い込まれる▼そこで地元の売薬業者が資金を持ち寄り発足させたのが現在まで続く廣貫堂。富山市の本社敷地内にある資料館では貴重な古文書などが無料で見学することができる▼置き薬商法がユニークなのは、使った分だけの代金を受け取る「先用後利」と呼ばれた方式。当時の庶民はいくつもの薬を自前で買い揃えることは難しかったためだ。全国配置薬協会が過去に行った調査では全国の世帯の12~15%が置き薬を利用している。意外に多いと感じた▼ドラッグストアがいたるところにある世の中になった。薬はとても身近になったが、ちょっと痛いだけでもつい買ってしまい、使い切らずに使用期限が過ぎてしまうものが結構ある。あくまで「薬より養生」が健康の基本だろう。(19・6・14)

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